沢井製薬、渡りに船だった「問題会社」の買い取り 製造不正を起こした小林化工に見いだした価値

拡大
縮小

30億錠という同じ製造能力でも、自社工場よりも稼働が1年前倒しできるうえ、取得額が推定100億円なので新規投資を行うよりも約300億円も抑えられる。体制をうまく整えられば、沢井にとっては「いい買い物」となる。

サワイGHDの澤井会長は会見で、今回の買収は「シェア拡大を実現させる手段になりうる取り組みだ」とも話した。業界トップとしてジェネリック薬の供給を安定させることはもちろん、日医工というライバルの混乱が続いているうちに、早期に出荷体制を整えてシェアを奪いたいという思惑がにじむ。

敵失を受けて「一強」となるか

ジェネリック薬市場は、医療費を抑えたい政府の促進策によって急激に拡大。メーカーもその波に乗って成長してきた。だが2020年に設定されていた政府の数量目標(医薬品に占めるジェネリック薬の割合80%)を達成するにつれ市場の成長は鈍化。メーカーへの追い風は一服したはずだった。

ところが小林化工や日医工などの不祥事による供給問題が起きた。2021年6月、「今回の件でシェアがどんどん高まっていく可能性が高くなってきた。中長期的にもジェネリック事業の成長余地は大きいと考えるようになった」と、沢井製薬の澤井健造社長はインタビューで語っていた。

ジェネリック薬を扱う会社は国内に200社近くあるが、どこも規模は小さく、沢井と日医工は圧倒的な業界の二強である。敵失で生じた混乱の中でシェアを一段と高め、業界の「一強」となるのか。100億円の投資はサワイGHDにとって大きな試金石となる。

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石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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