モデルナを甘く見る人が知らない驚くべき正体 製薬業界そのものを一変させる可能性を秘める

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つまり、モデルナのmRNAプラットフォーム戦略とは、mRNAという共通の開発手法を採用することによって、開発期間の短縮や開発コストの削減はもちろん、予防や治療の効果をより広範囲に及ぼしたりすることで、ワクチンや医薬品の開発において競争優位を確立することなのです。

モデルナのデジタルトランスフォーメーション

モデルナのポテンシャルを読み解くには、mRNAプラットフォーム戦略の他にもう1つ、重要なキーワードがあります。それが、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。

医薬品の開発は、病気の原因物質に対して治癒の効果がある化合物を見つけ出す作業です。病気の原因物質とそうした化合物の組み合わせは無数にある上、基礎研究の段階で効果がありそうな化合物を見つけることができたとしても、その後、実験や臨床試験などのプロセスを必ず経なければなりません。もちろん、実験で失敗に終わることもありますし、臨床試験の段階で有効性や安全性が必ず確認されるというわけでもなく、認可されるという保証もありません。となると、開発期間は長期化し、かかる開発コストも膨大なものとなってしまいます。

モデルナはクラウドやAI、アナリティクス、データサイエンス、ロボティクスや自動化への投資を強化することで、研究開発、実験・臨床試験、製造、出荷など業務全般をデジタルにシフト。デジタルテクノロジーを使い、開発にかかる期間とコストを抑制すると同時に、より適確なアルゴリズム、より効果のあるmRNAの医薬品や手法の開発、より多くの実験や臨床試験、より多くのデータの集積と解析、さらにより適確なアルゴリズム―といったサイクルを回し続けることによって、mRNAプラットフォーム戦略を強化していこうというわけです。これがモデルナのDX化です(図参照)。

図:自動化サイクルとデジタルトランスフォーメーション

(外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

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