日本にも押し寄せる「資源バブル終宴」の余波 原料炭価格はピーク時の半値以下に

拡大
縮小

だが、需要が伸び悩んでいるにもかかわらず、原料炭生産大手のBHPビリトン(英・豪)は競合を駆逐するため、増産を継続。同社の出荷量は2014年6月期に4510万トンと前期比2割増となった。

豪州の経済成長を引っ張ってきた資源価格が落ち込んでいることから、欧米の新聞はこぞって「資源バブルの終わり」を報じている。その余波が日本にも押し寄せ始めた。

特に影響を受けているのが、各国に資源権益を持つ総合商社だ。五百旗頭アナリストの試算によれば、総合商社大手5社は2013年度に原料炭がらみで合計870億円の減損を計上。「今期も数百億円の減損を計上する可能性が高い」(同)と分析する。

鉄鋼メーカーも原料安を喜べない

原料安の恩恵を受けるはずの鉄鋼メーカーも、環境は厳しい。鉄鋼業界の生産コストは原料炭と鉄鉱石の占める比率が高い。新日鉄住金が購入する原料炭の量は年間3000万トンに達し、日本の原料炭輸入量の4割を占める。

ところが、原料炭をはじめとした原料価格が下落していることを受け、自動車メーカーなど大口需要家からの値下げ圧力は高まっている。今下半期(2014年秋~2015年春)の販売価格は上半期(2014年春~秋)に比べ、3%程度の値下げで妥結したもよう。業界内では「原料安で得られるはずの恩恵は値引きでほぼ相殺された」(鉄鋼専門商社)とささやかれている。

こうした市況の悪化を受け、BHPビリトンをはじめとした大手資源メジャーは人員削減などのコストカットに着手。日系の大手総合商社も資源権益売却の検討に入ったとうわさされる。

中国の爆食を追い風に、資源バブルに踊った豪州や総合商社。今は宴の後始末に追われている。

「週刊東洋経済」2014年9月6日号<9月1日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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