ウーバーのやり口「冷静に見るとヤバすぎる」わけ 弱者を食い物に「大卒の白人」だけ儲ける仕組み

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ウーバーのモデルが搾取的なのは間違いない。ウーバーは大規模な設備集約型ビジネスを、設備なしで運営する方法を考え出した。

設備の購入とメンテナンスの責任をドライバー・パートナーに負わせる。さらに彼らを従業員という区分に入れないよう、あらゆる手を尽くして戦っている。彼らを従業員にすれば健康保険に加入させ、最低賃金を支払わなければならないからだ。

カリフォルニア州議会法案5(AB5)が従業員の範囲をギグワーカー(独立した請負業者)まで広げようとしているが、これはもっともな判断だ。なぜなら、彼らの労働実態は従業員そのものだからだ。

それに対してギグ・エコノミー企業(ウーバーやリフトなど)は共同でプロポジション22と呼ばれる「ギグワーカー保護法」を提出した。この法案は読者の推測どおり、AB5を停止して、労働費用の軽い新たな分類区分を設けようとするものだ。

「22にノー」キャンペーンには、81万1000ドルが集まった。主に労働者グループからだった。「22にイエス」キャンペーンには……1億1000万ドルもの大金が集まった。

「よくできているが不条理」なビジネスモデル

ウーバーのモデルはとてもよくできているが、不条理でもある。

ユナイテッド航空が搭乗員に次のように告げることを想像してみてほしい。ジョン・F・ケネディ国際空港からロサンゼルス国際空港に飛ぶ便に搭乗して仕事をしたいなら、飛行機を自分で調達して燃料を充填しておくように。飛行中にお客に出すスナック類も忘れるな。もちろん収入は山分けだ、と。

これはフランチャイズ・モデルと同じではないか。そう思う人がいるかもしれない。しかしフランチャイズが親企業に支払うのはせいぜい4~8%だ。ウーバーは20%も要求する。

ウーバーのビジネスは、ドライバーに最低賃金を支払えば成り立たないのではないかと言われていた。しかし2020年8月に、そうした疑念は雲散霧消した。ウーバーがそれを認めたからだ。

もし「ドライバー・パートナー」を、実態どおりに、つまり従業員として区分しなければならなくなれば、人口密度が高い都市部にビジネスを限定せざるをえないという。これこそが成功のモデルなのだ。少なくともウーバーにとっては。

ウーバーが食い物にしているのは誰か。

それは、必要な資格や経歴を得られなかったために情報経済の中で適当な居場所を見つけることができなかった人々や、伝統的な仕事で働くことができない人々だ。彼らはただ、家族の介護をしていたり、自分自身が健康上の問題を抱えていたり、あるいは英語がうまく話せなかったりするために搾取される。

ウーバーはそうした恵まれない人々の弱みにつけ込んでいる。提供する仕事は簡単に取り消しがきくうえに、報酬は最低賃金にも満たない。したがって立ち上げ費用も少なくてすむときている。

悪いのは、ウーバーの経営陣や役員の人格だろうか。それともわれわれの社会がそのような弱者を100万人も生み出していること自体だろうか。答えは「両方とも」だ。

(翻訳:渡会圭子)

スコット・ギャロウェイ ニューヨーク大学スターン経営大学院教授

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Scott Galloway

ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。MBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教える。連続起業家としてL2、Red Envelope、Prophetなど9の会社を起業。ニューヨーク・タイムズ、ゲートウェイ・コンピュータなどの役員も歴任。2012年、クレイトン・クリステンセン(『イノベーションのジレンマ』著者)、リンダ・グラットン(『ライフ・シフト』著者)らとともに「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出。

著書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は15万部のベストセラーになり、「ビジネス書大賞2019 読者賞」「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」の2冠を達成、日本にGAFAという言葉を定着させた。

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