日本経済低迷は「平成の経営者が原因」と言える訳 松下幸之助がいまの時代に伝えたい事とは?

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もちろん、「カネ」を追うアメリカ的経営にも長所はあります。しかしながら、それは真の経営とは言いがたい。なぜなら、経営は、「人間を集め、人間を統率し、人間が求めるものをつくり、提供するもの」、言い換えれば、つねに「人間」が中心に存在しなければならないものだからです。

経営に取り組むときは、普遍性、時代性、国民性を考えることが重要です。「人間大事」という普遍性。将来を読み解き、即応する時代性。そして、それぞれの国民の風習、習慣、文化。この3項目を前提にして経営を行わなければ、およそ正当な経営はできません。日本の企業、老舗が100年どころか、200年、300年、400年と生き延びているのは、意識するかしないかにかかわらず、このような3項目について考え、取り組んできたからこそなのだと言えるのではないでしょうか。

アメリカ的経営は、利を追うアメリカ人の精神風土に合った経営手法です。しかし、それをそのまま日本人の働く現場、すなわち「会社」に持ち込んでも、うまくいきません。アメリカ的経営を持ち込んだ結果の悲劇を、今の経営者たちは、認識すべきでしょう。

アメリカ的経営を「日本化」する知恵

声高に、「日本的経営に戻れ!」などと言うつもりは、私にはありません。けれど、このあたりでそろそろ、アメリカ的経営の「カネを追う経営」、そのためのマニュアル経営、利潤追求の経営、結果重視の経営、実力重視の経営を再点検してもよいのではないかと思います。

アメリカ的経営を取り入れるとしても、まずは、「日本化」する知恵がなければいけません。漢字を取り入れながら平仮名、片仮名を考え出し、また、仏教や儒教を取り入れながらも根底には、それまでの神道を堅持して巧みに融合せしめたように、経営においても同じく、日本化する知恵を働かせ、工夫しなければならないのです。

もともと「人を追う日本的経営」をしてきた日本企業が、「カネを追うアメリカ的経営」に適応するはずがない。それは、まるで「アメリカの生水を日本人に飲ます」ようなものです。当然、おなかを下し、脱水状態になってしまいます。いまの日本の会社は、いわば「脱水状態」と言えるでしょう。

ここでは、松下幸之助が繰り返し話していた日本的経営のマインドのうち、とりわけ根幹をなす3つを、簡単ではありますが、松下の言葉とともに紹介しましょう。

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