コロナ禍でも「駅前開発進んだ」新幹線駅の将来性 「何もない」揶揄された上越妙高駅は景観が一変

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一方、ミニ新幹線の沿線ながら、山形県はJR東日本と協力して「やまがたワーケーション新幹線」を企画、12月の運行を目指しているほか、毎週木曜日に県の非公式バーチャル・ユーチューバー「ジョージ・ヤマガタ」が司会を務めるオンラインのビジネスセミナーを開催中だ。コロナ下での需要拡大とビジネスチャンス創出、さらには移住促進など、多面的な効果を視野に入れる。フル規格新幹線の沿線ではみられなかった、総合的かつ実務的な内容のプロモーション施策だ。

すでに新幹線開業を経験した地域のみならず、開業準備を進めている地域でも、もっぱら意識されるのは、観光振興をはじめとする、目に見えやすい経済効果だ。これらの効果は、やはり「20世紀型」といえ、話題性など「開業特需」を当て込み、時間的には短期的なものが大半を占める。

どんな「新幹線効果」を狙う?

しかし、教育、文化、暮らしといった、人口減少・高齢化に耐えられる「持続可能な地域づくり」につながる施策や変革は、どちらかといえば地味なテーマで、話題も呼びにくい。過去の多くの開業事例でも、新幹線対策として施策が盛り込まれてはいるものの、継続的なウォッチがされづらく、地元では目立った評価対象にもなっていない。

「フルサット」を経営する北信越地域資源研究所の平原匡代表取締役(筆者撮影)

平原氏は「新幹線がまちづくりにもたらす影響は、10年スパンで考えなければ」と、長い時間軸の必要性を強調する。しかし、これまでは、10年どころか3年もたてば、新幹線は沿線にとって「あって当たり前」の存在となり、経済面も含めて、影響、効果の評価や施策の再検討の対象にもなりにくかった。

そこで、2024年春の北陸新幹線・敦賀延伸に向けて、平原氏らは沿線や全国の実務者・研究者に呼び掛け、ビジネスや研究、まちづくりを語り合うネットワークづくりを目指している。10月には試験的なキックオフ・ミーティングをオンラインで開催した。

新幹線ネットワークのビジネスモデルの行方が予断を許さない中で、西九州、北陸・金沢以西、北海道・新函館北斗以北の開業準備が進む。四国新幹線なども、建設促進運動を再起動中だ。ポスト・コロナ時代に、どのような「新幹線効果」を目指すのか。「脱・20世紀」の実現がカギだ。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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