世界初の「診る」人工知能 人間知生かす省エネ診断《戦うNo.1技術》

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 自社工場での実証実験の結果は下表のとおりだ。熊本工場ではエネルギー削減余地11%、削減額1200万円と、コンサルタントの分析と同等の値を抽出した。1工場当たり2億円の電気代が発生する製造業であれば、2年で投資回収が可能という。小学校の例でいけば、南太秦小と同規模の学校から依頼があった場合、エネブレインを使えばコンサルタントを派遣せずとも、10分間で改善提案ができるところまで来た。

人間知と機械知の協調 あえてアナログも採用

エネブレインのベースとなるアルゴリズムは、まだ発展途上だ。一定ペースでモノを造る工場と、書き入れ時に波のある飲食店では、削減すべきポイントが異なる。今後は業種ごとの最適をルール化していく。特に、これまで手薄だった飲食・小売業に力を入れる方針だ。

“人間知”と“機械知”の協調を武器に、オムロンは3年後、環境関連事業で09年度比10倍の売上高500億円を目指している。年間売上高1億円の工場だけでも、国内には約1000カ所ある。システムの汎用化に成功すれば、ビジネスチャンスは大きい。

ところで、人工知能が発達すればするほど、結局は機械知一辺倒に傾斜していくのではないか、という懸念が生まれてくる。

そこで冒頭の“ブザーでお知らせ”では、あえてアナログを採った。本当は基準値を超える前に自動的に電気を止める技術もあるし、知らせるだけなら、大音量を発する必要もない。だが、知らせるだけにとどめ、大音量で鳴り響かせる。

それは、ブザーが鳴り電気の無駄を探す教師の背中を、子供たちに学んでほしいとの意図からだ。子供の“診る”、すなわち現状改善へ策を見いだす力の育成に有意義であれば、旧式も進んで取り入れる。京都発、オムロンならではの信念である。

■オムロンの業績予想、会社概要はこちら

(前野裕香 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年7月10日号)

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