だから”夜のディズニー”は値上げできた 夜6時からのチケットは4時間で3900円に

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開業30周年を迎えた昨年度は、記念イベントなどで遠方客を集客し、3129万人と過去最高の入園者を記録した。今年度はその反動が懸念されたが、ふたを開けてみれば、13年4~6月期(第1四半期)の入園者数は昨年度を上回り、同期間では過去最高と、快進撃が続いている。「独自の満足度調査でも値上げは受容されるという結果が出た」(同社)としており、盤石な状況での値上げといえるだろう。

実際、株式市場は値上げを好意的に受け止めている。値上げ発表の翌日には、同社株は上場来高値を更新。「客足が遠のく値上げではない。逆に(価格を据え置いた)15時からのチケット(スターライトパスポート)へ流れる客がいれば、滞在時間が延び、飲食などで底上げ効果も期待できる」(証券アナリスト)と歓迎ムードだ。

一方、アフター6パスポートのみの値上げに対して、業界内からは「業界トップの立場を考えて欲しい」(レジャー施設関係者)との声も聞かれる。「重要なのは1日券の値上げ。これでは業界の価格基準の引き上げにつながらない」(同)と嘆息をもらす。

勝ち組だからできる絶妙な戦略

7月にハリー・ポッターの新エリアがオープンし、大盛況となっているユニバーサル・スタジオ・ジャパンこそ、1日券が6980円と、TDRを超える金額設定だが、ほかのテーマパークや遊園地、レジャー施設の入場料は依然低いまま。TDRの1日券の値上げがあればほかもこれに追随しやすいが、“部分値上げ”ではなかなか動きにくい。

チケット代金は、施設の魅力を上げる投資の原資として最も重要なもの。今回の値上げで夜間イベントの投資を回収する一方、入園者へのインパクトが大きい一日券を据え置くだけでなく、さらに15時からの来園者増ももくろむ――。まさに圧倒的な勝ち組だからこそできる絶妙な価格戦略と言えそうだ。

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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