実家が迷惑施設化「7戸に1戸空き家」日本の大問題 草木は伸び放題、害虫が発生、建物も老朽化

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実家を処分するなら、売るか、貸すか、活用するかだ。活用なら、リフォームをして、自分で住むか、店舗などに変える選択肢もある。地方では古民家カフェなどに改装したり、コロナ後を見据えて民泊などに転じる手もなくはない。

現実的に最も多い「そのまま維持」を別にすれば、やはり望ましいのは「売却」だろう。ただし親が住んでいたような古い実家を売るのは簡単ではない。マンションの住み替えなどを別にすれば、多くの人は買う経験はあっても、売る経験は少ないからだ。

一戸建ての場合、古い家を壊して更地で売るか、そのままで売るかは悩ましいところ。不動産仲介などを行うミライアスの山本健司代表取締役によれば、売る側は「買い手が土地のみか戸建て付きか、選べるように販売したほうが売却できる確率は高い」と解説する。解体費用も通常は100万円以上かかり、売却代金から差し引かれるので、注意が必要だろう。

ハードルはやはり地方だ。近年では買い取り再販なども増えたものの、まだまだ郊外では中古物件の取引は少ない。売買価格が安い分、仲介手数料も安くなり、それを避けて、不動産業者も積極的には扱いたがらない。複数の業者向けに相見積もりで査定を出してもらったり、自分でもレインズ・マーケット・インフォメーション(不動産流通機構の運営)で調べたりして、周辺の相場感を知っておくに越したことはない。

「新築」「持ち家」一辺倒からの脱却を

行きつくところ、空き家問題とは、国の住宅政策が限界にきていることと重なっている。高度成長期からの「造りっぱなし」の政策から、人口減少に転じても、なお発想が抜け出し切れていないからだ。「国は新築・持ち家に力を入れてきたが、住まいを畳むことまで視野に入れてこなかった」(野澤千絵・明治大学政治経済学部教授)。

日本ではすでに住宅総数(約6200万世帯)が総世帯数(約5400万世帯)を上回っている(2018年、国土交通省調べ)。単身世帯の増加によって、人口減でも世帯数は40万~50万のペースで増えているが、同時に毎年80万~90万戸の新規住宅が着工されている。住宅ローン減税をはじめ、政策面での支援も相変わらず手厚い。

今後は中古住宅の流通や利活用を増やすと同時に、空き屋の除却などを進める政策を一段と進めていくべきだろう。空き家問題とは”老いる”日本が向き合い、少しでも解決せざるをえない大問題なのである。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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