任天堂がWiiUの手痛い失敗から得た勝利の方程式 バランスなき理想追求には誰もついてこない

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この初期段階でのもたつきにより、サードパーティのソフトメーカーは、Wii Uへの参入に躊躇してしまいます。さらに、任天堂にとってもHD画質対応のソフト開発は難しく、「ピクミン3」など有力タイトルの発売延期が続出。結果、Wii Uは、Wiiのソフト数の2割程度のラインナップしか取り揃えることができず、徐々に「遊べるソフトが少ないゲーム機」という位置付けになってしまうのです。

2013年度は販売計画900万台に対して272万台という大幅未達の結果で着地しました。プレイステーション4(1年で420万台)やXbox One(1年で300万台以上)と比較しても、Wii Uは一人負け状態でした。

翌2014年3月時点の連結業績では任天堂は営業利益ベースで464億円の赤字に陥ります。岩田社長は、この決算を受けて「Wii Uは想定したどんな状況よりも悪い」と危機感を露わにします。

その後も「マリオカート8」や「スプラトゥーン」、「スーパーマリオメーカー」といった自社開発ソフトのヒットによって一時的にハードの売れ行きが回復を見せますが、長期的な販売実績にはつながりませんでした。

2015年7月に岩田社長が胆管腫瘍のために逝去され、後を引き継いだ君島達己社長は2016年3月、Wii Uの生産を年内に終了予定と発表します。

Wii Uの累計販売台数は1300万台。Wiiが1億0163万台だったことと比較すれば、Wii Uの実績の厳しさは明らかです。任天堂史上2番目に売れなかった家庭用ゲーム機として、Wii Uはその幕を閉じました。

なぜ失敗したのか?

Wii U失敗の要因は、サードパーティであるソフトメーカーを巻き込めなかったことにあります。

サードパーティが収益性を高めるためには、過去に開発したソフトを可能な限り多くのゲーム機で展開するのが定石です。この「マルチプラットフォーム」戦略にのっとれば、本来Wii U版を開発しても良かったはずです。

しかし、実際にはWii Uの開発の壁は高すぎました。Wii Uのハードは複雑で、サードパーティ側に多くの工数を要求するものでした。さらに、任天堂の開発ツールはオープンに無償配布されるのではなく、審査があり、かつ有償配布になっていました。ソフトメーカーにとってはWii Uはコストがかかる面倒なプラットフォームだったのです。

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