産業リサーチ(ゲーム) 飽和するソフト、高騰する開発費が課題に

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ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が展開する家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)2」の累計出荷台数が、2002年末時点で5000万台に達した。
 発売後2年10カ月たらずでの大台突破は、前機種のPSより1年2カ月早い。任天堂が展開するゲームキューブの1000万台(推定)、マイクロソフトが展開するXboxの800万台を大きく引き離して、独り勝ちの状態だ。
 早くから有力ゲームソフトを囲った戦略のほか、通常のDVD再生機器としても利用できることが、普及促進につながったといえる。
 一方で国内ゲームソフトの市場規模は縮小している。1997年の5832億円をピークに、2001年には3685億円にまで落ち込んだ。ユーザーがゲームに飽きてきたことがその要因ともされており、ユーザーを満足させるために開発費も高騰するなど、ゲームはハイリスクなビジネスになってきている。
 そうした状況下において、ついにゲーム業界の再編が本格的に始まったことを印象づけたのが、2002年11月に発表されたスクウェアとエニックスの合併話だった。
 スクウェアは「ファイナルファンタジー」、エニックスは「ドラゴンクエスト」といった二大人気タイトルを保有している数少ない勝ち組同士の合併で、今後のさらなるゲーム機の高機能化や競争激化に今から備えているところに、両社の危機感がうかがえる。
 また、業績不振が続いていたセガが、パチスロ最大手のサミー、業界大手のナムコと相次いで合併話が浮かんだが、セガは拒否。セガの連結累積損失は1180億円に達するが、同社の保有するソフトのライブラリーがあり、誰もがのどから手が出るほど欲しい、貴重な資産でもある。これを武器に、当面は独自の経営戦略を実行する予定だ。
 コナミは中堅ソフトメーカーのハドソンの買収だけではなく、フィットネスクラブ経営のコナミスポーツ(旧ピープル)等、M&Aによる拡大、多角化を進め、リスクヘッジを図っている。
 カプコン、コーエー、テクモは今のところ単独展開を標榜しているが、数年後にはこれら各社をも巻き込んだ再編が巻き起こる可能性がある。そうすれば、業界地図はまったく様変わりしてくるかもしれない。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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