女性が殺到「ヌン活」なぜこんなにも人気なのか コロナ禍でも予約が即効で埋まるほど

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アフタヌーンティーはヴィクトリア朝のイギリスで、侯爵夫人が午後の空腹を癒やすために始めたもの。それがやがて人をもてなす場になり、社交の目的で広がっていった。そうした上流階級の社交という歴史的背景が、人気が高い大きな要因である。

また、椿山荘に限らず、近年はヌン活ブームの影響で独自性を出すためか、旬のフルーツをふんだんに使ったり、ハロウィーンなどの行事に合わせたテーマを決めたサービスが目につく。中には1万円程度の高額なものも。こうした日本特有とも言える多彩なサービスが、ヌン活めぐりをする楽しみを生み、ブームを盛り上げる要因になっている。

「ホテルで優雅な時間を過ごしたいが、食事は高額で手を出せない」という人たちにとってアフタヌーンティーはちょうどいいサービスと言える。イギリス文化に憧れを抱く人たちにとっては特にコロナ禍、旅行気分を味わえる機会でもある。

ホテル椿山荘東京の園部氏は、「インスタ映え」の言葉が流行した時期と、ヌン活ブームの始まりの一致を指摘する。3段重ねのティースタンドは、確かに写真映えする。独自の工夫を凝らしたスイーツがあればなお映える。そうした特性が、各社の独自の工夫を加速させたところもあるだろう。

また、都会の忙しい生活を送る人たちにとって、何種類も食べるモノが用意されていて、間が持つアフタヌーンティーは、ゆったりとした時間を過ごす貴重な機会になっている。お酒が苦手な人、夜は時間が取れない人も、これなら楽しめる。

ホテルにとっても重要なサービスに

もともと集客力の高いアフタヌーンティーだが、コロナ禍でさらに人気に拍車がかかった。ホテルという非日常感や、ソーシャルディスタンスが確保されている安心感があるほか、ノンアルコールで夜になる前に集まれるよい口実になるからだ。

一方、ホテル側にとってアフタヌーンティーは、食事や客室利用などほかのサービスへの入り口となり得るほか、コロナ禍では客室稼働率が低迷する中、重要な収入源となっている。

2、3年前からは、スイーツブームが再燃し始めている。タピオカミルクティーのブームで紅茶のおいしさに目覚めた人もいる。いくつもの要素が絡まり合って、アフタヌーンティーブームが起こったと言える。日本では、コーヒーほど紅茶にこだわる人は少ないが、これを機会に紅茶を楽しむ文化が本格的に広まっていくかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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