「成果給<ダラダラ働く人の残業代」の現実 「成果主義」第2次ブームに水をさす人たち

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問題化する、残業人間にどう対処するか?

ところが、成果を出している社員に対し、別の観点から意欲を下げようとする存在がいます。それは

《残業時間が長く、業績が芳しくない同僚の存在》

です。高い成果を出し、給与も高い人が、残業ゼロで帰社していたとしましょう。が、残業時間が月で20時間くらい差が出たら年間の昇給分は逆転してしまう場合があります。取材した広告代理店のFさんは同期でもトップクラスの成果を上げて、高い評価を得ています。ただ、残業はしない主義で毎日17時には会社を出ます。一方で気になっているのは同期の勤務スタイル。17時以降もダラダラと仕事をして、月に何十時間も残業をしています。たとえば、

・上司からの指示を待機して待っている(本日に指示があるとはかぎらない仕事でも)
・会議自体を残業時間帯に設定している
・明日でも構わない仕事をダラダラ行っている

このような仕事ぶりが気になって仕方ありません。

仕事の成果はFさんのほうが明らかに上。それなのに、細かく計算すれば、残業代でFさんの給料よりその長時間労働型の同期の給料のほうが多いのです。これでは、Fさんが不満を抱くのも当然です。

こうした、成果による昇給を、残業の支払いが上回ってしまって、不満を抱いている会社は少なくありません。ただ、日本で残業を支払わないという方針は許されませんので、会社は成果を出している社員に対して、いくつかのケアをすることで不満を解消しているのが実情ではないでしょうか。

具体的には「将来的に上のポストに抜擢するから我慢しなさい」とか、「無駄な残業を撲滅すべくマネジメントを徹底するから」……といった感じです。

さて、働いた時間に関係なく、 成果に対して賃金が支払われる仕組みとしてホワイトカラー・エグゼンプションが、あらためて注目されつつあります。ただ、この仕組みの対象は限られた職種(専門職)が対象の施策。景気が回復して全体的に残業時間が増えてくると、会社は一般社員に対して残業を容認するようになり

「残業して稼ぐのがいちばん近道。だから残業は積極的に」

という社員が出てきたりします。そんなタイミングに成果を出しており、残業が少ない社員をどのように評価するか? 会社にとっては大きな問題ではないでしょうか。

ここで解決の糸口をいくつか挙げさせていただくと

・残業している姿を称えない風土を醸成する
・社員別残業時間を管理職同士で共有する
・残業時間と業績を連動した人事評価を行う

 こうした取り組みで成果と勤務時間の整合性を極力とるよう、努力をしていただきたいものです。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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