「嫌われる上司」と「信頼される上司」の決定的な差 部下のやる気がぐんとアップする「声かけ」とは

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否定や非難する言葉はダメだけれど、部下をほめたり励ましたりする言葉ならなんでもいいかというと、そういうわけでもありません。

ふだん、自分のなかでは高く評価していなかった部下が、いつもよりいい成果を出した場合など、うっかり「意外とよくできたね」「思ったよりもよかったね」などと、よけいなひと言を付け足して嫌みな言い方をしないように、気をつける必要があります。

×よけいなひと言 「思ったよりも、よかったね」

◎好かれるひと言 「あなたならできると思っていたよ」

自分はほめているつもりでも、相手は、自分のふだんの評価の低さからくる言葉の意味を敏感にキャッチして傷つきます。また、「良い・悪い」は相手を評価する言葉の代表。相手の言動の良し悪しを一方的に判断している、上から目線のネガティブなイメージを与えます。

このケースは、「○○さんならできると思っていたよ」「いい結果で、私もうれしい」と、プラス言葉で率直な気持ちを伝えることで相手のやる気が高まります。

反対に、部下の仕事が残念な結果に終わったときは、どんな声かけをすればいいでしょうか? 「がっかりした」「きみに期待したのが間違いだった」などと傷口に塩をぬるようなことはせず、「今回の結果をふまえて、次につながる方法を考えよう」と、未来に向けての声かけを意識してください。失敗によって人は成長していきますから、思わぬ結果が出ても相手を責めないようにしたいですね。

「信頼される上司」はこんなふうに声をかけている

部下が仕事に対して不満を言っている場合、それが事後であれば、がんばった努力をまずは認めてあげましょう。

「よくここまでがんばったね」「いろいろ大変だったよね」「よく対処できたね」とプロセスを評価して、ひと言くらいは「ご苦労様」と労いの言葉をかけてあげてください。上司に不満を言えるほど部下が心を開いてくれているのは、いい関係性ができている証拠です。

しかし、見栄を張ったり隠したりせず弱音を吐いてくれた部下に対して、「僕はもっと大変な仕事をしたことがあるぞ」「他の人はもっとひどい目に遭ったことがあるよ」と、自分や他人と比較されたらどんな気持ちになるでしょうか? おそらく「この人は何でもすぐ自分と比較して、本人の気持ちを理解しようとしない」と思われてしまうでしょう。

×よけいなひと言 「私はもっと大変な仕事をしたことがあるよ」

◎好かれるひと言 「私が経験したことで、ヒントになりそうなことがあれば伝えますね」

『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 働く人のための言いかえ図鑑』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

同じ仕事でも、大変と思うかどうかは人それぞれ。部下が大変だと言うのであれば、その気持ちをまずは受けとめてください。もしも部下が、ちょうど取り掛かっている最中の仕事が大変だと言っている場合は、「今まで自分はこういう経験をしてきたから、何かヒントになることがあれば伝えますね」といった声かけが適切です。

「自分がサポートできることがあれば、いつでもニーズに応える」という思いが部下に伝われば、安心して仕事に取り組んでくれるはずです。

働く時間は、「人生の3分の1以上」を占めると言われています。そこで良好な人間関係を築くことができれば、ストレスの少ない、満ち足りた人生を過ごすことができるでしょう。

拙著『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 働く人のための言いかえ図鑑』が、働くみなさんの心の重荷を軽くするために、少しでも役立つことを願っています。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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