自民党総裁選「テレビ」の報道がやたら過熱する訳 最もわかりやすい権力闘争に視聴者の関心集まる

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「ポスト菅」を選ぶ今回の総裁選は、コロナ禍での閉塞感を誰がどのように打破してくれるのか、という期待も含めて注目を集めるだろう。

そして、「永田町の論理」と批判され揶揄されても、自民党内の動きはやはり視聴者にとって「気になる」のも間違いない。

私はこの20年以上、情報・報道番組に携わってきたが、視聴者は総裁選で各候補の「政策」よりも「キャラクター」や「権謀術数」をより多く見る。

もちろんテレビは政策もひと通り伝えていく。しかし視聴率を獲得するのは「政策解説」ではないのが現実だ。

「真面目に政治、政策を」というニーズに対して

そのあたり「真面目に政治を伝えてほしい」と考える視聴者にとっては不本意に違いない。

コロナ対策、景気対策、福祉、教育、外交、防衛などについて候補者の考えを知りたいというニーズはもちろんあり、そこに力を割くのが報道としての王道だろう。絶対に必要だと思う。

ただ、「政策を伝えてほしい」というまともに思える指摘以上に、「街頭演説バトル」や「水面下で蠢く派閥領袖」のほうに多くの視聴者の関心が集まるのも事実である。     

また自民党総裁選の報道によって「埋没」しかねない野党各党と、その支持者も神経を尖らせることだろう。「総裁選をたっぷり取り上げることで、結果的に自民党の宣伝をしているのではないか」と。

ただ、多くの人に関心を持ってもらうことは政治を行ううえで重要なことである。興味を持たれない政治家・政党では、肝心の政策を実現していくことも困難だろうと私は考える。野党の代表選も、その時は報道しているはずで、「大きく取り上げるかどうか」は、要するに世の中の関心があるかどうかとイコールなのである。

今の日本で最もわかりやすい「権力」をめぐる「権謀術数」が繰り広げられる。

おそらく「ポストの約束手形」「裏切り」といった言葉も飛び交うだろう。さまざまな噂もまことしやかに出てくる。

そして放送するにあたって「公職選挙」ほどの〝制約〟もない。

生々しい人間模様を同時進行できる。

そんな、視聴者の関心が集まる「総裁選」を、テレビが放っておくわけはないのである。このようにして良くも悪くも、テレビは総裁選でやはり「盛り上がって」しまうのだ。

村上 和彦 TVプロデューサー、京都芸術大学客員教授

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むらかみ かずひこ / Kazuhiko Murakami

1965年生まれ、神奈川県出身。日本テレビ放送網に入社し、スポーツ局に所属。ジャイアンツ担当、野球中継、箱根駅伝などを担当する。その後制作局に移り、「スッキリ」「ヒルナンデス」「ブラックバラエティ」「24時間テレビ」など幅広いジャンルで実績を上げる。2014年、日本テレビを退社し、TVプロデュースの他、執筆、講演会など活動の場を広げている。現担当 : BSフジ「プライムオンラインTODAY」監修演出など。

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