「自分の天職とは何か?」悩む人のための処方箋 人気企業に入っても辞める人が多くいる理由

拡大
縮小

企業の最大の目的は、利益を上げることです。となれば、お客さんが損をしたって利益が出るならばかまわない、という企業も出てきます。どんな会社でも多かれ少なかれその傾向はあるのですが、とくにそれが激しい業界が、金融業界なのです。

仕事の意味とは、なんでしょうか? わたしは、社会の役に立ち、人を助け、人に喜んでもらえることだと思っています。

その視点で考えれば、先に挙げた人気企業ランキングのようにはなりません。高齢化社会が到来したいま、ヘルパーやケアマネージャーなど介護関連の仕事はとても大切な仕事です。わたしたちが生きていく上で一番大切な、食べ物をつくってくれているのは、農業や漁業に従事する人たちです。住む場所や働く場所をつくってくれる建設業も、昔から必要とされてきた仕事です。人気企業ランキングに入るわけではないですが、わたしたちが社会で生活していく上で、大切な仕事ばかりです。

イエスが寄り添った人たち

イエスの弟子の何人かは、漁師でした。また、イエスの父親のヨセフは、大工でした。漁師も、大工も、人間が社会で生活していくのに欠かせない仕事です。しかし、朝早くから舟を出し、汗をかきながら魚の網をひいたり、重い柱を運んだり削ったりするのは、たいへんな苦労がありました。

ところが当時の社会では、ユダヤ教の権威者たちは、清潔な衣をまとい、神の権威をふりかざして人々からお金をとり、生活していたわけです。

『13歳からのキリスト教』(青春出版社)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

イエスが、当時の社会で差別されていた漁師や徴税人を積極的に弟子にしたのは、苦しい仕事でも、嫌がられる仕事でも、社会のためには誰かがやらねばならない仕事を引き受けてやっていたから、という面もあると思います。

決して華々しい仕事ではないけれど、ほんとうに社会の役に立ち、必要とされている仕事をやっている人たち。そういう態度で働く人たちにこそ、イエスは寄りそったのです。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT