「新型コロナ起源」バイデン報告書で判明したこと 原因究明へ、米中の協力姿勢こそが今必要だ

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イギリス科学誌『ネイチャー』に掲載された6月8日付の「新型コロナウイルス研究所流出説:科学者が知っていることと知らないこと」と題された記事によると、ほとんどの科学者は新型コロナウイルスが自然を起源とし、動物から人間に感染したとみている。

多くの感染症専門家は、最もありうるシナリオはウイルスが自然に進化し、コウモリから直接人間に、あるいは中間宿主の動物を通じて広がったとの見方で一致している。エイズウイルス(HIV)やインフルエンザ流行、エボラ出血熱、さらにはコロナウイルスの1種であり、2002年から流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)と2012年から流行した中東呼吸器症候群(MERS)といった新興感染病はすべて自然発生した。

さらに言えば、こうしたウイルスの起源を究明することは決して簡単なことではないだろう。MERSは、コウモリ由来のウイルスがヒトコブラクダを介して人間に感染すると判明するまでに1年以上がかかった。SARSウイルスは、コウモリからハクビシンかその仲間を介して人間に感染したと考えられている。

新型コロナウイルスの自然発生説が科学者の間で有力な一方で、多くの科学者が引き続き、武漢研究所から流出した可能性を除外せずに、さらなる調査を求めているのは、ひとえに流出説を否定するだけの証拠がないからにほかならない。また、自然発生説を証明できる証拠が出てくれば、流出説も結果的に立ち消えになるだろう。

コロナ発生源をめぐって火花を散らす米中

アメリカは今や新型コロナウイルス感染者が約4000万人、死者が65万人にそれぞれ達し、世界最悪の感染大国となっている。このため、ウイルスの起源解明と感染拡大の責任の所在が常に国内外で政治問題化してきた。とくに感染対策で失敗し、政権の座を追われたといって過言でないトランプ前大統領は在任中、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」や、中国武術のカンフーとインフルエンザを掛け合わせて「カンフル」と呼ぶなど、中国を「スケープゴート」として政治利用し、中国に非難の矛先を向けてきた。

これに対し、中国は今も舌鋒鋭く反発をますます強めている。中国外務省の傅聡軍縮局長は8月25日に記者会見し、アメリカがウイルスの起源調査を政治問題化していると非難した。そして、WHOと中国が共同調査で武漢ウイルス研究所からの流出の可能性が極めて低いと結論を出したことを指摘し、「もし流出説を排除することができない場合は、公平公正の精神に基づいて、次の調査はアメリカ国内で行わなければならない」と述べた。

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