ジョブズ存命でも、アップルの進化難しかった 『沈みゆく帝国』著者、ケイン岩谷氏に聞く(前編)

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 ナンセンス(寝言だ)――。アップルの現CEO、ティム・クックが発売直後に異例の批判をした書籍『沈みゆく帝国~スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか~』(英語訳『Haunted Empire: Apple After Steve Jobs』)が、6月に日本で発売された(原著の発売は3月)。多くの波紋を読んだ書籍を執筆するに至る動機は何だったのか。アップルには今、何が足りないのか。著者のケイン岩谷ゆかり氏を直撃した。

 アップルの未来描きたかった

――この本を書こうと思ったきっかけは。

初めから何か明確なきっかけがあって、本書を書こうと思ったわけではない。2008年からウォール・ストリート・ジャーナルでアップルの担当になり、11年春頃にアップルの成功ストーリーを書きたいと漠然と思うに至った。新聞で書ける記事の量や深さは限られるので、もっと踏み込みたいとも感じていた。

その頃アップルは絶頂期で、すべては創業者兼CEOであるスティーブ・ジョブズのお陰と見られていたが、実は周りのチームが支えていた。当初はそういった話に興味があったが、ちょうど書籍化に向けた取材を始めようと考えていた11年10月に、ジョブズが亡くなってしまう。直後に(アルベルト・アインシュタインやヘンリー・キッシンジャーの伝記を書いた経験のある)ウォルター・アイザックソンによる、スティーブ・ジョブズの伝記『スティーブ・ジョブズ』が発売された。

アイザックソンの著書が世に出たことで、アップルやジョブズに関する過去の興味は満たされたように感じていた。しかし、アップルの未来はどうなるのか。一連の出来事を受け、本書のテーマはそこに焦点を絞ろうと決めた。

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