財務省82年組セクハラ・改ざん辞任「ワル」の素顔 ワルは「やり手」といった意味で使われている

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主計局の主流をほぼ無傷で歩んだ福田も、結果的にワルの文化から抜け出すことができず、セクハラに及んでしまった。このOBは、「一度根づいてしまった文化は、なかなか変えることができない。福田が最後のあだ花であってくれるといいんだが……」と、心なしか声のトーンを落として話した。

もう1人、公文書改ざんの佐川。財務省の調査で、理財局長当時の佐川が改ざんを主導した事実が明らかになったのを受け、改ざんを強制されて自殺に追い込まれた近畿財務局元職員の妻が訴訟を起こし、現在進行形の不祥事として終止符が打たれる気配が見えない。

財務省も落ちるところまで落ちた

財務省のワルは単なる遊び人というだけでなく、にっこり笑って人を斬る、あるいはヤクザ顔負けに強面ですごんでみせる……といった側面も併せ持つ。森友学園への国有地売却問題で国会答弁に立った佐川は明らかに後者の典型であり、不遜で攻撃的な話しぶり、野党議員に対しては挑発的とも思えるやり取りが目立った。

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ある現役幹部は、「OBも含めて、佐川さんを擁護しようという声はいっさい出なかった」と断ったうえで、むしろ「停職3カ月相当」とした処分内容に強い疑問を呈し、財務省も落ちるところまで落ちたという思いを吐き出すように語った。

「新人の頃から口を酸っぱくして教えられるように、役人が決裁文書を書き直すとなったら、それだけで一発アウトですよ。改ざんに手を染めて3カ月の停職で済むとはとても思えないし、なぜ懲戒免職にしなかったのか理由がわからない。

組織を守るときは個人の処分をきちんとしないといけないのに、あれだけでも財務省が腐った組織であることが証明された。

ワルの文化を一掃しようとした大蔵省不祥事に伴う大量処分の教訓がまったく生かされなかったばかりか、失われた信用はこの先10年かかっても取り戻せないでしょうね」 

森友問題は安倍政権から菅政権に替わっても、引き続き国会で真相究明を迫られ続けている。「呪われた82年組」との陰口がいまだに省内でささやかれる今日、「財務官僚=超エリート」という通説にも完全にとどめを刺されたと見ていいのではないか。

岸 宣仁 ジャーナリスト

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きし のぶひと / Nobuhito Kishi

1949年埼玉県生まれ。1973年東京外国語大学卒業後、読売新聞社入社。横浜支局を経て経済部に勤務し、大蔵省、通産省、農水省、経企庁、日銀、証券、経団連機械、重工クラブなどを担当した。1991年、退社し経済ジャーナリストに。日本大学大学院知的財産研究科講師。

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