東大生が警鐘「夢を諦めた事すら気づかない」子供 偏差値35から逆転した「ネオヒューマン」的思考

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僕は、偏差値35、2浪という条件から東大に合格しましたが、当初は、自分には何もできないと思っていました。自分が東大を目指すなんて、考えたことすらありませんでした。

親が高収入で、小学生のころから成績優秀、さらに塾に通って、当然のように有名中高一貫校に入るなど、そもそも恵まれた状況にいて、既定路線で東大に合格する人はたくさんいます。その人たちが「高学歴」となり、階層構造が固定化され、そして、その構造が再生産されています。

僕はもともと成績も悪かったですし、けっこうキツイいじめを受けてもいました。だから、「自分の状況では仕方がない」「どうせうまくいくわけがない」と、無意識に諦めていました。人生は、ただ与えられるものだと思い込んでいたのです。

ところがピーターさんは、与えられた状態をただ受け入れるだけの生き方を「原始人と同じ」と揶揄しています。実際には、そこから先へ自分で道を切り開いて進んでいくことができるし、人間の価値はそこにあるわけです。

僕は、いい先生に出会ったこともあって、崖っぷちから、エスタブリッシュメントにどう対抗すればいいのかを考え始めました。

「こんな学歴社会は嫌だ」と言って他の道を探すのも大いに結構なのですが、それで何かが変わるのだろうか。なにも見ないままでそう言うのもおかしいと思いましたし、東大を知らずに東大を批判することもできません。

やはり僕自身が東大生になることで、「恵まれた人が当たり前に東大に入る」というルートに一石を投じたいと思いました。エスタブリッシュメントにアプローチして、変革する存在になりたい。そして、僕らのような存在がいることを知ってもらいたいと思ったのです。

僕が「リアル・ドラゴン桜」プロジェクトをやる理由

僕は現在、カルペ・ディエムという会社をつくり、東大に行くことが当たり前ではない、偏差値の低い学校の高校生たちに勉強法を指導しています。東大合格を含め、自分自身の線を乗り越えてもらうための「リアル・ドラゴン桜」プロジェクトに取り組んでいるのです。

自分で引いてしまった線を飛び越えて、あの環境に行くぞと思うことが大事で、実際に、偏差値の低いところから医学部に合格する生徒も出てきています。それによって、まわりに同じような思いの生徒たちが集まってきてもいます。

最終的には、僕のように『ドラゴン桜』的な道のりで東大に行く人を、全体の2割ほどまで増やし、エスタブリッシュメントの世界を相対化できればいいなと考えています。これが、僕なりの「エスタブリッシュメントへの反抗」です。

もちろん、東大だけがゴールではありません。僕は、よく受験生たちにこう言います。「君たちの第一志望を応援したい。『行ける大学』ではなく、『行きたい大学』に向かって走り、そこへ行ってほしい」と。

東大が、その子にとって「行ける大学」なら、むしろ行かないほうがいい。それなら海外留学のほうがいいのではないかと思っています。「東大」はただわかりやすいだけで、本当に本人が「行きたい」と決めた大学を選んだほうが良いのです。

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