1人1社制、学校斡旋…高校生就活の制度と問題点 高度成長期から不変の慣行に見直し議論進む

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私が先生からいただいた求人票は小さな工場でした。他のクラスメイトは、大きな工場を紹介してもらっていましたが、普段の私の授業態度が原因だったのかもしれません。私は紹介先の企業で働く気になれず、一般の求人情報雑誌を購入し自分で電話をかけて就職活動を行ったものです。

そもそもはじまりは戦前までさかのぼります。慣行であった学校斡旋を戦後、職業安定法によって法的な枠組みとして位置付けられました。そして、職業安定所(ハローワーク)と学校が共同で斡旋を行う現在の仕組みになったのです。

「1人1社制」は、高度経済成長の頃から始まりました。安定的な人材確保と、就活長期化による学業への影響を防ぐことが目的といわれています。ただ、法的なものではなく、各都道府県の労働部局と学校側、企業側が申し合わせをする、「慣行」という位置づけです。しかし、大学生の就職とは異なり強い拘束力を持っています。

就職氷河期に高卒の就職率が落ち込み、専門家などから制度の弊害が指摘されたことから、厚生労働省・文部科学省が対策を講じ、2002年以降は就活の途中から複数の会社の受験を可能にするなど、協定を一部緩和され現在の形になっています。

高校生を守るための仕組みですが、今時自由に応募する企業を選択できないというのもおかしいという声も出てきています。

新興企業、ベンチャー企業にとっては不利

一方の企業にとってこの就活システムはどうでしょうか。長く高卒採用を続ける企業にとっては、先生が窓口に立ってもらえるため、安定的に高校生を紹介してもらえる利点があります。しかし、高卒採用を始めたばかりの新興・ベンチャー企業にとっては不利な状況になっています。

求人票に掲載できる内容は限られていますし、学校の先生の「目」が入って紹介されるため、先生の印象、長年の関係性が重視されます。どうしても高校で長年採用を続けてきた企業や、名の知れた企業が有利になります。

企業は若手採用に苦労し、大学新卒だけではなく高校生に目を向けています。コロナ以前の6年間では、求人数は倍増しています。しかし、新たに始める企業は、慣行の障壁によってなかなか求人活動をうまく進めることができないのです。

当社でも高卒採用をスタートしたとき、大卒の志願者は多く集まるのになぜ高卒は集まらないのかと困りました。レッドオーシャンのはずの大卒採用のほうが、人が集まるという、高校生の採用意欲があっても難しいと考えている企業は多くいるのです。

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