大手メディアが「五輪強行開催」にだんまりの背景 大手各社が組み込まれた「メディア委員会」

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巨額の放映権料を支払うテレビは言わずもがなである。NHKと民放キー局でつくるジャパン・コンソーシアム(JC)は2018年平昌冬季五輪と東京五輪に総額660億円といわれる放映権料を払っている。2014年ソチ冬季五輪とリオ五輪の放映権360億円と比べ、2倍近くに及んだ。

テレビ局にとって、五輪は視聴率を大いに稼げる人気のキラーコンテンツである。アメリカ・NBCユニバーサルのジェフ・シェル最高経営責任者(CEO)は14日、東京五輪では同社史上最高の広告収入が見込まれると述べた。NBCユニバーサルは、2014年ソチ冬季五輪から2032年夏季五輪まで計10大会で総額約120億3000万ドル(約1兆3000億円)を支払っている。日本のテレビ局も、広告収入アップを狙う二匹目のどじょうだろう。

大会組織委員会の中にある「メディア委員会」

実は日本の大手新聞・テレビの経営幹部陣はずらりと、大会組織委の中にある「メディア委員会」に所属している。この委員会の委員長は、フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役兼フジテレビジョン取締役相談役の日枝久氏が務めている。副委員長には共同通信社顧問の石川聡氏が就いている。五輪取材経験が豊かな記者も委員として名を連ねている。海外メディアの特派員らが所属する日本外国特派員協会(FCCJ)会長も委員になっている。

このメディア委員会はいったい何のために設置されたのか。

大会組織委は2014年9月の理事会で、専門的見地からアドバイスを得る専門委員会として、「メディア委員会」(委員長=日枝久フジ・メディア・ホールディングス会長、委員36人)と「アスリート委員会」(委員長=鈴木大地・日本水泳連盟会長<当時>、委員21人)を設置した。

当時の大会組織委の森喜朗会長はメディア委員会の初会合で、「世界の人は映像や記事を介し、競技などを楽しむ。『オールジャパン体制』で盛り上げていくためにはメディアの協力が不可欠になる」とあいさつしている。つまり、東京オリパラを挙国一致で盛り上げるために報道各社代表の36人をメディア委員会の委員として取り込む狙いが当初からあった。

委員36人のうち何人かにこのメディア委員会について、直接取材した。

ある委員は「無報酬で委員を務めている」と言い、「会合は年1、2回ありました。昨春の五輪延期決定以降は連絡のみです」と述べた。そして、会合の内容については、「組織委からの報告が多かったです。報告の中で、各報道機関の五輪の取材経験者が意見を述べていました」と話した。

また、別の委員も匿名を条件に取材に応じ、「このポジションは単なる名誉職で報酬は受け取っていない」と明言。「私は会合にも招かれてないし、他の委員にもあったことがない」と述べた。

メディア委員会の委員の中には、単に名義貸しをした人もいたことがうかがえる。

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