「経営者の報酬」を減らして最低賃金を引き上げよ 衝撃!「中小企業の労働分配率80%」に潜む欺瞞

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日本の場合、消費性向が下がっているから、最低賃金を引き上げても個人消費の刺激にならないという指摘もあります。しかしこれは、日本の議論に多い合成の誤謬です。全体の消費性向ではなく、低所得者の消費性向を見るべきです。言うまでもなく、彼らの消費性向は他の属性に比べて高いのです。

自民党では、社会的弱者のためにピンポイントで給付金を出すべきだと議論されています。社会的弱者の中には、最低賃金で働いている人が圧倒的に多いのは確かです。この人たちに支援が必要だと言うならば、なおさら最低賃金の引き上げに踏み切るべきではないでしょうか。

最低賃金の引き上げが地方経済に与える影響

最低賃金を引き上げると、地方が大変なことになるという意見も耳にします。これは感情論としては理解できます。

ただし、中小企業の所在地を見てみると、全体の24.9%は東京都、大阪府、愛知県です。さらに、中小企業の49.1%は47都道府県中の生産性の高い14都道府県に集中しています。

また、生産性が相対的に低い地方の場合は企業の絶対数も少なく、雇用も少ないのがデータ上明らかです。例えば、鳥取県の中小企業の数は1万6059社、中小企業の雇用は約13万人です。

雇用が極めて少ない県の生産性が低いことを理由に、国全体の最低賃金を据え置きにするのはまったく理屈に合いません。最低賃金を引き上げて支援が必要になる県は、地方創生政策など別の方法で支えるべきです。

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