危険不可視社会 畑村洋太郎著 ~知識と情報の共有化による「社会の意志」の成熟を

危険不可視社会 畑村洋太郎著 ~知識と情報の共有化による「社会の意志」の成熟を

評者 中沢孝夫 福井県立大学特任教授

 「絶対安全」を求める社会は、かえって「危険な社会」になってしまう。著者は典型例として子供の遊具をあげる。箱形ブランコ、遊動円木、回旋塔などが公園からなくなっているという。死亡事故があったりしたからだそうだ。

しかし、「危険と遭遇することは子どもたちにとって大きな学びのチャンスです。『危険なものをなくす』という安全対策は、子どもたちから危険と触れる機会を奪うことにつながります」と著者は言う。しかも、もともとスリルこそが遊びの最大要素でもある。

メンテナンスが不備なジェットコースターの事故などは論外だが、世論が「危険なもの」の製造者や管理者を一方的に責める風潮になると、社会全体が「危険の排除」に傾き、危険に伴っている便益そのものをも失ってしまうことにつながりかねない、と著者は指摘する。

たとえば「原発」。原発抜きに現代の生活は成り立たないのに、まだ「悪者」である。著者は「原発は安全」というのではなく、「原発は危険」だから「想定外の問題に対処できる手厚い安全対策を行っている」ことを示す必要があるという。“原発銀座”の福井に勤務先のある評者は深く納得。

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