沿線で勝手に樹木伐採「刈り撮り鉄」の大問題 撮影の邪魔?他人の所有物なら器物損壊罪に

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器物損壊罪だけではない。他人の所有地に入ってしまえば住居侵入罪(刑法第130条・3年以下の懲役または10万円以下の罰金)に該当する場合もある。

住居侵入罪が成立するのは他人の建造物やその周りの敷地への理由のない侵入の場合であるが、その場合でなくても、入ることを禁じられた場所や他人の田畑に理由なく入れば軽犯罪法違反になる(軽犯罪法第1条第32号・拘留または1万円未満の科料)。

もっとも、法律を持ち出す以前の話として、他人の物ではなく自然に生えている物だからと言って、よそから来た者が撮影の邪魔を理由に樹木を伐採したり枝を払ったりしていいはずはない。

樹木も風景の一部だ

撮影者からすれば何の意味も持たないように見えても、撮影者より前からそこにいる樹木であり、地域の風景を形作る樹木である。他の動植物のために重要な物だったりすることもある。誰かにとって思い出深い樹木かもしれないし、実はご神木であったりするかもしれない。

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撮影対象の鉄道はその風景の中を走っているものである。邪魔であるかもしれない樹木も含めて撮影対象の風景のはずである。樹木が写真に入るとしても樹木の風景も含めて鉄道写真である。ならば樹木を生かす撮影技術をまず磨いてほしい。

冒頭に挙げた中央本線の事件が仮に鉄道写真を撮ろうとしていた者の行為であるなら、二度とこのようなことはしないでほしい。このようなことをする者は鉄道趣味者ではない。単に犯罪者である。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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