ユニクロ、今期2度目の下方修正が映すもの 減損損失計上で純利益予想を100億円引き下げ

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連結業績を牽引するのは、屋台骨である国内ユニクロ事業だ。前2013年8月期は金曜日から翌週月曜日の「4日間連続セール」など低価格攻勢をかけて採算が悪化したが、今期は一転して値引きを抑制。第3四半期までは、4月に下方修正した計画値に対して、営業利益ベースで約30億円の超過で進捗している。

足元も、接触冷感機能を持つ肌着「エアリズム」や比較的単価が高いジーンズなどの販売が好調で、「消費増税の影響はまったく受けていない」(岡崎CFO)という。3期連続の減益が続いていた国内ユニクロ事業だが、今期は4期ぶりに増益に転じそうだ。

むろん、国内ユニクロ事業にも課題がないわけではない。コットン、ウールなどの原材料価格の高止まりや円安によって原価の上昇圧力がかかっているほか、人件費の高騰が影響を及ぼし始めている。

人手不足を背景に、小売業界ではパートやアルバイトの人件費が高まっている。そのうえ、労働環境の改善に向け、2013年4月から国内ユニクロの店長約900人に対し、月3万円の店長手当てを支給するようになった。これらの影響によって、売上高人件費率は第3四半期時点で前年同期比1.3%上昇している。

さらにユニクロは、パート、アルバイト1 万6000人を3年以内に地域正社員化する方針も掲げている。同社によれば地域正社員化によって賞与や社会保障費の負担が発生し、1人当たり人件費は2~3割上昇する公算だ。熟練販売員の長期雇用で1人当たりの生産性向上が見込まれるものの、短期的には利益圧迫要因になる可能性が高い。

今秋から順次値上げへ

こうした中、同社は利益の確保に向け、今秋、全商品で平均約5%の商品単価上昇に踏み切る。現在店頭に並ぶ夏物商品を消化し、秋物へ切り替わるタイミングで順次値上げを実施していく計画だ。同社の既存店売上高は消費増税があった4月以降も増収を維持している。特に客単価が伸び続けていることによる自信が、このタイミングでの値上げを決断した一因と考えられる。

とはいえ、値上げによって客数が減少し、在庫の値引き処分を強いられるリスクもある。それだけに、「お客様の価格感応度はまだまだ高い。(値上げの効果は)利益率を維持する程度」(岡崎CFO)と、慎重な姿勢を崩していない。

機能性や素材などで、値上げに見合った付加価値を消費者に訴求できるか。今秋の値上げは今後の国内ユニクロ事業を占う試金石となりそうだ。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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