観客減に苦しむスポーツ界が見誤っている本質 コロナ禍で配信視聴者を増やす方向は正しいか

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スタジアムでレプリカユニフォームを身にまとい、自分のお気に入りのチームや選手たちを声の限りに応援する週末の楽しみ、試合結果にかかわらず試合内容の評価の記事を読み漁り、他チームの勝敗結果に目を光らせ、お気に入りのチームの順位の変動に一喜一憂する。SNSでスタジアムの雰囲気やグルメ情報、仲間と一緒に撮った写真をアップする。そんなスポーツを中心としたライフスタイルの魔法が解けてしまったかのようだ。

スポーツビジネスで最も重要だと教わるスタジアム来場者数を増加させるというベースの部分が崩れかけているように感じた、このような状況は、コロナ禍がきっかけで、感染を怖れた一時的なものであればまた戻るはずだ。しかし、これがファンの行動様式そのものの変容を招いてしまったのだとしたら、かなり深刻だ。

どっちの方向に向かっているのか、今起こっている問題の本質を考えることなく、単に現状のコロナ禍が原因で観客数が減少してしまったと思い込み、それならスタジアムやアリーナに来場者を戻すのではなくOTT(Over The Top、インターネットなどでの動画配信)の視聴者数を増やす方向に舵を切るという話も聞く。

スポーツはどこに向かえばいいのか

問題の本質が新型コロナウイルスの感染リスクそのものではなく、それをきっかけにしたファンの行動変容だとすれば、その方向性は必ずしも正しいとは言えない。だとすれば、スポーツはどこに向かえばいいのだろう。

自分自身、4月7日の緊急事態宣言を受け、不要不急の外出を避け、ほぼ家で過ごした。当時SNSで腕立て伏せを披露して一言コメントして次の人を指名するという、プッシュアップチャレンジが流行っていた。いずれ回ってくるだろうと思い、1日200回の腕立て伏せを日課にした。

ゴールデンウィーク明けから、早朝あるいは深夜に人に会うのを避けながら、ジョギングを始めた。そんな時間でも走っている人の数は意外と多く、みんな考えることは同じなんだなあと思いながら走っていた。世の中が少しずつ動きだすのに合わせるように、走る時間も太陽の高い時間帯に移っていった。

週末の日中は、老若男女を問わず、かなり多くの人たちのジョギングやウォーキングをしている姿が目立つようになった。それまでの長かった“おうち時間”からくる運動不足の解消と健康への意識の高まり、先の見えない戦いと不安からくるストレスの解消のために始めたのだろう。

公園に足を運ぶと、親子、あるいは、友達同士でボールを蹴ったりキャッチボールをしたりしている姿も多く目にした。ここには間違いなくスポーツが存在していた。

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