英国「メーガン妃嫌い」に日本人が学ぶべき教訓 異文化になじむのはそう簡単なことではない

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実は王室にとってメンバーの好感度は過去のいかなる時代より重視されています。ダイアナ妃がパリで事故死した後、エリザベス女王が声明を控えたことが批判され、王室は存続の危機に晒され、以来、女王は国内外の王室への評価には敏感になっています。

ヘンリー王子が選んだ黒人の血の入ったアメリカ人女性を受け入れたのも、王室が白人優位主義ではないダイバーシティに適応していく姿勢を見せるためだったと王室関係者は解説しています。

今回のユーガブの調査では、ヘンリー王子の父チャールズ皇太子の好感度も57%から49%へと下落しました。一方、エリザベス女王の支持率は80%という高い好感度は維持されています。

在任69年のエリザベス女王の君主としての哲学は「無私と義務を果たす」ことだと言われています。公務に徹する姿勢は、日本の天皇家にも通じるものがあります。ただ、自由と個人の選択を重視するイギリス王室では、女王の哲学を継承するのは困難を極めていることが垣間見えます。

ヘンリー王子夫妻はイギリス王室の弱体化を招く?

では、今後のイギリス王室はどうなっていくのでしょうか。

フランスの日刊紙ル・モンドは、3月11日の「バッキンガムを揺るがすヘンリーとメーガン」と題する社説で、「共和国(フランス)の市民がイギリスの君主制の本質を理解するのは難しい」と前置きしながらも、ヘンリー王子とメーガン妃の息子アーチー・ハリソン・マウントバッテン=ウィンザーは、今はなくてもチャールズ皇太子が国王になれば、王位継承順位第7位の殿下の称号が与えられ、ヘンリー王子夫妻の放った「毒矢は、王位継承者たちに突き刺さることだろう」と皮肉を込めて結んでいます。

今から約230年前に国王夫妻をギロチンにかけたフランスでは、とくに左派リベラルのル・モンド紙のイギリス王室への見方は厳しく、イギリス王室内の公平性、平等性を欠く事柄には敏感で、ヘンリー王子夫妻の“毒矢”はイギリス王室の弱体化を招くと指摘しています。

人種差別の真偽とは別に王室がメーガン妃を追い込んだことの責任は重いと思われます。この解決法は対立する両者が腹を割ったコミュニケーションの機会を何度も忍耐強く持つしかないと私は思います。相手の話を注意深く聞く姿勢がなければ解決の道は見えてこないでしょう。

王室がプライドからメーガンに忖度を一方的に求めているとするなら、ダイバーシティは程遠いと言えます。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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