岡山発「バター専門店」月商2000万に達したワケ ほとんどの商品が「数カ月待ち」なのはなぜか

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というのも、秀島氏はもともとウェブデザイナーという、食とは関係のない業種の出身だ。東京で働いていたが、実家の事情で帰郷を余儀なくされ、地元でカフェを開業したのが、食の道への第一歩だった。

一時期はパンの製法にはまり、「たくさんの人と愛を分かち合う」という意味を込めて、5kgの重さの大きなパンを焼いていたこともある。

実はこのパン焼きの経験が、食べるバターにつながった。

同氏は食べるバターの発想について次のように語る。

「5~6年前にパリに行った際の体験が発想のもとになっています。今は日本でも知られていますが、ボルディエなど、テーブルバター人気が高まっていました。ああ、これは日本でもブームになるな、と直感しました。そして実は今私が作っているバターというのは、以前焼いていたパンと材料の着想は同じなんです」(秀島氏)

「次に来るのはフレーバーバター」

秀島氏のパンは、卵や牛乳、バター、砂糖などを使わず焼きあげる「パン・ド・カンパーニュ」というアルザス地方の伝統的なパンに、ナッツやフルーツなどでフレーバーや色味をつけたもの。であるから、小麦粉を発酵バターに代えたものが「ブール アロマティゼ」ということになる。

また現在のバターブームでは産地や牛の種類へのこだわりが特徴として見られるが、秀島氏はあえて、その路線を外して独自の道を貫いたという。

「これまでの菓子のブームから見ても、次はご当地バター、クラフトバターが来るというのはなんとなく予想できました。その次はフレーバーバターです。私はいち早くフレーバー、中でも人がやらない素材を採用してつくっています」(秀島氏)

商品の種類を見てみると、当初発売した9つのフレーバーではピスタチオやカカオ、ベリーと、スイーツによく用いられる素材を採用。しかし後に、うに、生ハム、にぼし、トムヤムクンなどの素材と合わせた商品も発売している。

これらはスイーツというよりは、パンにぬったり、チキンなどの料理にのせることで風味をプラスできる調味料として用いることができる。その意味ではより本来のバターに近いかもしれない。

このように、バターに合わせる素材が、同社の差別化ポイントの1つになっているようだ。

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