「白い恋人」石屋製菓のパンケーキが行列のワケ 創業70周年を迎え「東京」で勝負に打って出た

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例えばHOKKAIDO WINEは、北海道産ワインのチョコレートをぶどう風味の生地でサンドしている。白い恋人に似た、サクサクとした食感はそのままに、ぶどうの香りと味が口の中に広がる。

チョコレートには、やはり白い恋人に相通じるものがあって、ミルキーな甘さがどこか懐かしい。価格帯は白い恋人のおよそ倍で、18枚入り2160円。

6種類のフレーバーがすべて入ったSaquアソート18枚入り2160円(筆者撮影)

米山氏によると、ワインやチーズ、キャラメルといったフレーバーは粉末にして生地やチョコレートに練り込むことで、風味を強く感じさせるよう工夫しているという。

白い恋人より高級感を感じさせ、なおかつ大人の客層を意識。白い恋人が北海道限定であるように、こちらは「北海道では購入できない」ことでプレミア感を演出した。

折よくGINZA SIXのオープン時期が重なっており、北海道外ブランドの1号店ISHIYA GINZAを当時最高とも言える好立地でスタート。その後、新宿、東京駅、羽田空港、心斎橋などに展開した。

売れ行きは好調で、北海道からの観光客にも東京土産として人気だという。また、展開を始めた2017年には、本家本元の白い恋人の売り上げも上がったそうだ。

日本橋店の新たな看板スイーツ

そして2019年、北海道外ブランドのイシヤにとって新たな局面となったのが、日本橋店のオープンだ。こちらはカフェと販売店の併設店として展開しているのだが、その看板スイーツがSNSなどで大きな話題となっているのだ。11時の開店前から行列ができ、日に200名が訪れる。コロナ前は夜の11時まで営業していたこともあり、その倍の来店があったそうだ。

その新たなヒット商品はパンケーキ。

客の心を魅了するのはまず、その華やかな見た目と提供する際の演出である。生クリームはケーキの飾りとして用いるときはツノが立つぐらいにかために泡立てるものだが、このパンケーキでは、少しゆるめに仕上げられており、2段に重ねられたパンケーキの上にたっぷり盛りつけている。焼きたてのパンケーキの温度により、とろけやすくなっている状態だ。

そこで、パンケーキを仕上げるときにはクリームがとけ落ちないよう、フィルムで押さえておく。提供時にそれを外すと、クリームが流れ落ちる仕組みだ。

きちんと包まれていたクリームが一気になだれ落ちるその様子はカタルシスさえ感じさせる。一番人気のストロベリーフレーバーの場合は、トッピングされた苺色のソースがまるで花を咲かせるようにケーキ全体を覆う。

SNSの中でも最近は衆目をさらう動画のアップが人気だが、このパンケーキも動画で撮影するお客が多いというのもうなずける。

フィルムを外すと、生クリームがふわりとパンケーキ全体を覆い尽くす。このダイナミックな演出が人気の理由の1つだ(筆者撮影)
次ページコンセプトは「職人のレシピ」
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