「フィット」発売1年、快適さが際立つ通信簿 コンパクトカーらしい実用性を追求したホンダ

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ところがホンダは、前方視界を確保するため、窓枠としてのフロントピラーと、衝突時に客室を保護する強化されたピラーとの役割分担をさせることで、視界もよく、客室も堅牢に守れる車体構造を編み出し、新型フィットで採用したのだ。フィットの運転席に座ると、晴れやかな前方視界に大きく安堵させられる。

そのうえで、これは初代フィットからの課題であったが、フロントウィンドウのガラスにダッシュボード上面の造形が映り込む問題が解決されずにきた。しかし新型では、平らなダッシュボード形状とすることで改善された。それでいて、メーターなどの視認性は損なわれていない。このダッシュボードのフロントウィンドウへの映り込みは、フィットだけの課題ではなく世界的な乗用車の問題でもあり、新型フィットがそこに解答をもたらしたのだ。

なおかつ前方視界のよさと、平らなダッシュボードの造形が、車幅感覚を掴みやすくもしている。運転することに対する負担を広範囲に解消したといえる。新型フィットは、安全で快適で安心感のある視界の確保を根本から解決し、多くの人が乗るコンパクトカーに運転することへの安らぎをもたらしたのだ。

前方視界を向上させたフィットのダッシュボード(写真:ホンダ)

モーターとエンジンの“いいとこどり”となる e:HEV

新型フィットの販売比率で64%を占めるハイブリッドについて、従来のホンダは3つの方式を開発し、小型車用、中型車用、上級車やスポーツカー用に分けてきた。しかし新型フィットでは、従来は中型車用としてきた2つのモーターを備えるハイブリッド方式に統一した。そして名称も「e:HEV(イー・エイチ イー ブイ)」と改め、ホンダの中核のハイブリッドシステムに位置づけた。

コンパクトカー用のハイブリッドシステムを刷新したことで、フィットの快適性は大きく前進した。基本的には、シリーズ方式といってモーターのみでの走行を行い、ガソリンエンジンはその電力を確保する発電用動力に使われる。したがってエンジンは、発電に必要なときしか作動しない。それは日産のe-POWERに近い考えだ。新型ノートのe-POWERが格段の進歩を遂げたことからも、コンパクトカーの上質さを大きく前進させるハイブリッド方式といえる。

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