電化ではなく「電車化」する路線、なぜ増えたか モーター駆動の気動車や蓄電池車両が続々登場

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実は機関車の世界では一足先に、北海道を走る貨物列車用のDF200やJR九州の「ななつ星 in 九州」の牽引機がエンジンで発電してモーターで駆動するタイプの機関車である。それどころか昭和の時代からエンジンで発電しながらモーター駆動をしていた車両はあった。それが国鉄のディーゼル機関車である。ディーゼル機関車には、エンジンで発電してモーター駆動のDF50形などと、エンジンで駆動するDD51形などがあり、前者を「電気式」、後者を「液体式」と呼んだほか、前者は「ディーゼル電気機関車」とも呼んだのだ。

モーター駆動の場合、加速時はモーターに流す電圧を上げていけばよいが、エンジンの場合は自働車のクラッチに相当する部分に、加速をスムーズに行うよう液体変速機を使っているため「液体式」と呼んだ(従来方式の気動車も液体式)。そのため、エンジンで発電してモーター駆動という車両自体は古くからあったのである。

しかし、DF50の時代は直流モーター駆動、DF200は交流モーター駆動のVVVF制御で、エネルギー効率や性能が大幅に改善されている。電車の世界に目を向けても、かつては直流モーター駆動、現在はほとんどの電車がVVVF制御の交流モーター駆動となったが、電気式のディーゼル機関車も同じ進化を遂げていたのである。

海外では旧型が主流

ハイブリッド車両は技術の進歩で効率のよくなった蓄電池を搭載している車両もあり、エンジンの回転は一定範囲内であっても、加速時や登坂時は蓄電池の電気が補い、減速時や抑速時の電気を蓄電池に蓄えることも行っている。

DF50の時代は「電機は使うときに発電しなければならない」といわれ、電気は貯めておくことができなかったため、発進時や登坂時はエンジンがフル回転し、黒煙を吐いて走ったものである。

ちなみに、世界へ目を向けると、DF50と同じシステム、旧式のディーゼル電気機関車が主流である。鉄道技術の発達したヨーロッパではそもそも非電化区間が少なく、ディーゼル機関車の活躍場所はアメリカや発展途上国となり、旧式のほうが都合がいいという理由もある。生産しているのもアメリカやインドなどが主となり、これらの国の機関車が各国へ輸出されている。

旧式の電気式ディーゼル機関車のメリットは、構造が単純なので、砂漠が続くような土地でも故障せず、メンテナンス技術の低い発展途上国でも修理ができるという点である。かつては日本からもタイやマレーシアなどへディーゼル機関車が輸出されたが、輸出用は電気式であった。

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