知る人ぞ知る「東武の宇都宮線」その奥深い世界 おもちゃのまち、大谷石の駅舎、そして"廃線跡"

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では、新栃木―東武宇都宮間の地域輸送はどうか。そもそも、東武宇都宮線の沿線にはなにがあるのだろうか。

「宇都宮市と栃木市の間に沿線では壬生町があります。壬生町は人口が約4万人。市になってもいいくらいの比較的大きな町でして、壬生駅が古くからの中心地で、国谷駅の周りにも住宅地ができてベッドタウンになっています。宇都宮方面に通勤される方が多い印象ですね」(立川さん)

小さな駅舎の壬生駅だが、壬生町の中心にある(筆者撮影)

江戸時代中期、当時壬生藩ではカンピョウの栽培に力を注いで特産化、今でも壬生町を中心に栃木県は国内の8割を生産する“カンピョウ大国”になっている。また、蘭学教育にも注力、蘭学通りとしてその名が残り、壬生町の観光資源のひとつである。そしてもう1つ、1960年代になって誕生した“おもちゃのまち”も壬生町の名所と言っていい。

おもちゃのまちはそのまま駅名にもなっている。駅を降りたら何があるのか、なんともわくわくする駅名である……。

「ここには玩具メーカーが集まる工業団地がありまして、そこへのアクセスということで1965年に駅が開業しました。トミーテックさんとかバンダイさんとか、大手の玩具メーカーがありましてNゲージなども作っているんですよ。毎年12月には広場に各メーカーがテントを立てておもちゃを3〜5割引で販売するイベントもやっています。ほんとにこれが飛ぶように売れるんですよね」(立川さん)

実際に訪れてみた

おもちゃのまちには工場だけではなく、壬生町のおもちゃ博物館やバンダイミュージアムなどもあるという。実際におもちゃのまち駅を訪れてみた。

おもちゃのまち駅の東口に展示されている5号蒸気機関車(筆者撮影)

島式のホーム1面2線。栃木寄りに改札口があって、そこを抜けて階段を降りて地下の通路で駅の東西に出ることができる。工業団地の中心は主に東側。その東口の駅前広場には、立派に整備された蒸気機関車が展示されていた。説明書きを読んでみると、このSLは5号蒸気機関車といい、1921年に宇都宮石材軌道(のちに東武鉄道に合併)が導入したものだという。

1938年には東武鉄道から鹿島参宮鉄道に移籍し、現在の関東鉄道竜ヶ崎線で活躍。1970年頃に引退すると、現在のトミーテックに引き取られておもちゃのまちにある事業所で保存されていた。それを改めて整備して、駅前に展示したものだ。トミーテックといえば鉄道模型だし、なんともいえない縁を感じる駅前風景である。

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