「人へのアドバイス」はなぜしてはいけないのか 「聞き疲れ」を感じている人に伝えたいこと

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その理由は主に2つあります。

1つは、「頭を使っていること」です。

アドバイスをする人は、話を聞きながらも「どんなアドバイスをするか」ということに意識が向いています。自分の経験を思い出したり、相手を傷つけない言葉を考えたりして、頭を使いすぎるのです。この「考えすぎ」が疲れの原因になります。

もう1つの理由は、悩みに対してアドバイスをした後に、「ああ言ったけれど、よかったのかな」と悩んだり、「いいことを言えたはず!」と得意になったりすること。話を聞いた後も感情が揺れ動き、疲れにつながります。

また、この後で詳しくお話ししますが、アドバイスで他人を変えるというのはとても難しいことです。「いいアドバイスをした」と思っていたのに、実行もされず、また同じような相談をされる……ということが起きるのはこのため。何のために親身に相談に乗ったのかと、疲れの原因になります。

答えは必ず本人の中にある

・アドバイスはしなくていい

そもそも、相談をしてきた人というのは、本当に意見やアドバイスを求めているのでしょうか?

例えば、友だちとのショッピングを例に挙げてみましょう。

AとBのどちらを買えばいいか相談されたとします。よくあるのが、自分がAをすすめたとしても、「Bがいいと思うんだよね」と、結局は本人が決める、というケース。

アドバイスしたほうは「悩んで損した」「決まってるなら聞かないでよ」と思いますよね。この場合、友だちが求めていたのはアドバイスではなく、自分と同じ「B」という答えです。

このように、答えは、必ず本人の中にあります。深刻に思える相談でも基本的には同じで、本当に求めているのは、自分の決断を後押ししてもらうことなのです。

それでも、なかには、「自分の経験を伝えて参考にしてもらえたら」と思う人もいるかもしれませんね。

ですが、本当の意味で役に立つアドバイスをする、というのは、カウンセラーでも難しいこと。なぜなら、悩みを抱えている相手と自分は別の人間で、価値観も考え方も違うからです。そのため、一生懸命考えてアドバイスしたとしても、相手にとっては的外れだったりします。そんなアドバイスは相手に響きませんし、もちろん相手が変わることもないのです。

そして、こうしたことが、1回や2回ならまだしも、何度も何度も続くと、いつかはあなたも限界を迎えます。「あなたのために、我慢して聞いてアドバイスしてあげたのに」と感じるわけです。

次ページアドバイスは、する側の「承認欲求」の表れ
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