加害者調査に見た「わいせつ教員」の思考の誤り 保護者の声と加害者調査から考える(後編)

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項目は「対人関係の思い込み(思考の誤り)」、「子どもとの距離感(接近)」、「職場の人間関係(孤立・不全感)」から、具体的な性的思考を問う分野もある。全34項目を「よく当てはまる(3点)」から「まったく当てはまらない(0点)」で回答し数値を集計。学校での具体的な場面も含めた性加害への危険度を把握し、心理士や精神科医などの専門家に相談するよう勧めるのが目的だ。

『性的誘いをはっきり断らないのは、イエスを意味する』
『特定の児童・生徒との個別相談・指導が複数回、長時間に及ぶ』
『児童・生徒への指導、励まし、ねぎらいのために頭、肩、腕などの身体に触ることがある』
『仕事がうまくいかず、苦痛や焦りを感じたり、ミスをすることが増えた』

修正が難しい固定的要因にとどまらず、職場や家族との関係性も絡んで性行動に結びつく可能性も考慮。そのため価値判断から感情能力など項目は多岐にわたる。そして、何よりチェックリストであぶり出されたのは、加害者が持つ間違った正義=『認知の歪みや思考の誤り』だと今井氏は語る。

自分がいないとダメなんだという誤解

「『自分が助けてあげなきゃ』『自分がいないとダメなんだ』という感情が発展して、ヒロイズム(英雄的行為)としてのめりこんでしまう……。それが先生と生徒という関係を乗り越えてしまうんです。

例えば、両親がケンカして帰りたくないという生徒がいれば、本来は説得するか、親御さんを交えて話し合いの場を持つでしょう。でも、そこに“思考の誤り”が入ると、車の中での夜遅くまでの相談が重なり、それが好意になって『ぼくがいてあげるから』という考えの中に、性的行為が含まれていくんです」

同時に今井氏は「まさかこの先生が……」という、周囲からいい先生と捉えられている人にこそ加害者が多いと分析。その裏で、『4つの前提条件という壁』を乗り越えた場合、性加害に踏み込んでしまうと考えている。

第1に「性加害の動機を持ち」、第2に「行動するための内的抑止力を抑え込み」、第3に「外的抑止力を抑え込み」、第4に「被害者の抵抗を弱めるか制圧して加害が発生する」というプロセスだ。

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