1週間で5万人署名「わいせつ教員」の根深い問題 保護者の声と加害者調査から考える(前編)

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大竹さんたちが文部科学省に求めたのは、子どもにわいせつ行為をして懲戒処分となった教員に、教員免許を再交付しないで下さいという、“親としての願い”だった。現行の教育職員免許法では、懲戒免職で免許を失っても3年が経過すれば再取得が可能とされている。

「わいせつ被害の対策として3年を5年に延ばすという【年数】の議論を聞いて、そもそも考え方が違うし、ありえないと。じゃあ5年後に二度とわいせつ行為をしないという確約がありますか? 子どもに性的欲求を持つ人は、再び子どもと接触する職に就かせないのが、治療という観点からしても原則だと思います」

依存症の治療においては、加害者の犯罪を誘発する“引き金”となる人や物から遠ざける事が第一歩とされる。アルコール依存ならお酒、痴漢なら電車など。だが教員は、更生には適さない“教室”という場所に、願えばまた戻れてしまう……。その環境に大竹さんたちは“NO”を突き付けたのだった。

先生が「ナイ」と言えば学校も否定

全国学校ハラスメント被害者連絡会は文部科学省に『公立学校のトイレと更衣室以外の場所への防犯カメラ設置』も要望している。その役割は監視とともに『証拠』なのだと大竹さんは語る。

「子どもや保護者がどれだけ証言しても、先生が『ナイ』と言えば、学校も『ナイ』に裏返るんです。その現実を会の誰もが経験してきました。こんな行為がありましたと10項目を報告書で提出しても、2つ・3つを認める程度。

それも、教育の一環、わいせつ目的ではないと、肝心な性的わいせつは認めません。小さな体で勇気を振り絞ったのに、誰の言葉をいちばん採用するのですか……大人の前では子どもの声は消されてしまうんです」

声を上げても否定されてもみ消され……。周囲から「うそつき」よばわりされ、不登校になった子どもさえいる。そしてまた、大竹さんも同様に塗炭の苦しみを味わった1人だ。

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