「コタツ記事」を重宝するWebメディアの大迷走 「取材なき記事」や「ネタの盗用」が許される理由

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かつて、メディア業界では取材をしない「コタツ記事」は恥ずかしいものとされていた。ところが、今や貴重なドル箱になってしまった。

何しろ、コタツ記事は読まれる。転載先であるYahoo!ニュースのアクセスランキング上位に来るものも多い。そりゃそうだ、「有名人」の「過激な発言」をあえて選んでいるのだから。

コタツ記事を作るメディアが定期的に記事にする「PVを稼いでくれる有名人」は、たとえば以下の人たちである。実際にネットでその名を目にした読者も多いはずだ。

タレント枠:EXIT、岡村隆史、おぎやはぎ、GACKT、加藤浩次、指原莉乃、立川志らく、デヴィ夫人、松本人志など

コメンテーター・ご意見番枠:青木理、石野卓球、乙武洋匡、高須克弥、杉村太蔵、デーブ・スペクター、テリー伊藤、西村博之、橋下徹、東国原英夫、百田尚樹、古市憲寿、堀江貴文、三浦瑠麗など

スポーツ枠:張本勲、ダルビッシュ有など

コロナ枠:岡田晴恵、各医師会会長、玉川徹など

※50音順、文中敬称略

ほかにも様々な有名人の言動が記事化されているが、もはやコタツ記事を量産するメディアにとって、「ウォッチすべき番組」や「ウォッチすべき人物」は固定されている。

とりあえずワイドショーのコメンテーターや、Twitterで過激な発言が目立つ有名人の発言を正確にメモして、SNSで騒動になった直後に記事化すれば、大量にPVを稼げる。うまくいけば1本の記事で百万円単位の儲けが出ることもある。

さらに記事にかかる費用は、数千円から〜1万円程度の原稿料のみ。儲けを優先するならば、これをやらない手はない。結果、ネットニュース業界はコタツ記事だらけになってしまった。

テレビ局が「ネタの盗用」を見逃す理由

現状を憂いた私は以前、テレビ局の人間に「勝手におたくらの番組を使って、PV稼ぎをしているメディアがありますよ。訴えるか、それとも彼らがPVで得た収益の何%かを請求してはどうですか?」と提案してみた。

しかし、返ってきた答えは何とも脱力するものだった。

「そうは言っても中川さん、社内に『宣伝になるから放っておけ』って言う人も多いんですよ……。僕も本当は使用料を取るべきだと思っていますし、番組の発言を切り取った記事をきっかけに、視聴者が増えるとも思わないのですが……」

当事者への取材や、深い考察もないコタツ記事。それらを一掃するには、提携しているサイト、特に日本最大のポータルサイトであるYahoo!ニュースが配信を拒否すればいいだけなのだが、現状、改善される動きはない。

次ページなぜテレビ局は「ネタ泥棒」を見逃すのか?
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