日本の“ギリシャ化”が緩やかに進んでいる--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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 そして、政府は歳入増加を検討せざるをえなくなる。その場合、日本はヨーロッパの水準よりはるかに低い5%の消費税率を引き上げなければならなくなるだろう。ただ、長期の低成長が続く中で、増税が適切な選択かどうかには疑問も残る。

過去、日本の“敗北”に懸けてきた投資家は、日本人の驚くべき柔軟性と復元力を過小評価したために、大きなやけどを負ってきた。しかし、先行きの財政見通しは危機的な状況になるはずだ。数年後には政治的な安定性も大きく揺らぐだろう。

結局、日本の例を引き合いに出して、国民を説得した外国の指導者は正しかったのだろうか。

日本に関する誇張した表現は行き過ぎである。特に中国の場合、日本の例は為替問題に関するよい口実になっている。ただし、財政赤字を擁護する人は、巨額の財政刺激策を正当化する理由として、日本を引き合いに出すべきではない。

逆境に直面したときの日本の粘り強さは称賛に値する。しかしながら、先行きのリスクは、債券市場が認識しているよりもはるかに大きなものである。
(写真と本文は関係ありません)

Kenneth Rogoff
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001~03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。
(週刊東洋経済2010年4月10日号)

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