トランプ排除は「表現の自由侵害」と言えない訳 SNSによるアカウント停止は極めて合理的判断

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選挙プロセスが暴力で破壊されかかったばかりの今、アメリカの民主主義は危機に瀕している。これは国家的緊急事態であり、緊急措置が求められている。だからこそ、テクノロジー大手以外もトランプ一派を排除する動きに出ている。

医療保険会社が構成するブルークロス・ブルーシールド協会やホテルチェーンのマリオット・インターナショナルは、米大統領選の結果を覆そうとした共和党議員への献金を無期限停止すると発表。オンライン決済サービス企業のストライプ、EC(電子商取引)システムを提供するショッピファイなどは、トランプ陣営やトランプ個人のブランドとの取引を停止した。

企業側には、議事堂襲撃事件への嫌悪に加え、ビジネス上の動機もある。アメリカのチェックアンドバランス(権力の抑制と均衡)制度や平和的な政権交代は、企業の利益になってきた。トランプ支持者が解き放った混乱は米経済、ひいては米企業を害すると、経営者らは理解している。

表現の自由は奪われてなどいない

世界最大のビジネスメディアをうたうフォーブス誌は、トランプ一派の排除をより力強く呼び掛けた。トランプがそそのかした反乱は「熱心に何度も繰り返されてきたウソの塗り重ね」に根差すと、同誌のランドール・レーン記者は指摘している。

米企業はトランプの報道官を務めた者たちを雇ってはならないと、レーンは忠告する。彼らは1人残らず、「潜在的な偽情報拡散器」と見なされるからだという。

トランプの表現の自由は奪われてなどいない。彼は記者会見を開くことも、プレスリリースを発表することも、窓から大声で主張を叫ぶこともできる。

特筆すべきことだが、アップルは事前にパーラーに対して、人々の身の安全を損なうコンテンツを削除するよう求めていた。だが、警告は無視された。パーラーはもはや(今のところ)死に体だ。それはそれで仕方がない、としか言いようがない。

フロマ・ハロップ(ジャーナリスト)
<本誌2021年1月26日号掲載>

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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