ITバブル崩壊時と違って今の受注は”実需”です--村田恒夫 村田製作所社長

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--世界に冠たる生産技術の流出は食い止めなければならない。

そういう工程は海外に持っていっていませんから。コンデンサーにしても、生産設備があればできるというものではなく、材料である粉の配合や特性が生産設備とマッチしなければ、いい製品はできない。材料開発の技術は国内に置き、ブラックボックス化しています。

--セラミック原料は中国など海外に依存していますが、原料の安定確保に心配はありませんか。

一部の希土類(レアアース)について特に中国の輸出規制があるのではないかと危惧はしていますが、われわれが得ている情報では、規制にまで至ることはないのではと聞いています。価格的にはかなり上がっていますが、それほどダメージは大きくないので、供給さえあれば大丈夫だと思います。

--電子部品における日本の競争優位は安泰でしょうか。

日本企業のコンデンサーの世界シェアは、ハイエンド商品で9割ぐらい。ローエンドを含めた全体のシェアでは7割ぐらいでしょうか。韓国勢や台湾勢も力をつけてきている。われわれとしてはハイエンドのほうをどんどん開発して付加価値を上げていくという戦略です。

--ハイエンドでは海外勢より5年も10年もリードしている?

10年というのは言い過ぎじゃないでしょうか(笑)。

当社としても気を緩めるわけにはいきません。特に新規事業、大型の新商品が近年出ていないというのもあって、正直いらだちはあります。マーケットの情報を十分とらずに独自の開発を続けていたゆえに、マーケットニーズからやや乖離していた感がある。内向きの仕事をしていると、なかなか実を結ばない。そこで昨年1月に組織変更をして技術・事業開発本部を立ち上げました。私が本部長なのですが、マーケティング部門と新規事業開発室、技術開発部門の三つを統合することで、マーケットへのアプローチがスムーズになるようにした。それが徐々に軌道に乗り始めたかなという状況です。

--15年度に新事業だけで1000億円規模にするという目標を掲げています。
 
 リチウムイオンなど電池が中心ですが、そこまでの規模にするにはハイブリッドカーなど自動車分野への参入が必須です。当社はいちばん後発で、各自動車メーカーもすでにパートナーを見つけて動いている。簡単ではないですが、自動車用途にしても要求される性能や品質は多様化するでしょうから、食い込むチャンスは十分あると考えています。
 
 エネルギー効率が非常に高く、小型化できる電池は今のところリチウムイオンです。われわれは過去にもそういう素材の開発をしてきており、積層コンデンサーと同じように電極を塗布して薄く重ねていく工法をとっているので、経験を生かせる。最近の発熱・発火事故で問題になっている安全性も高いと考えます。ただ、いきなり自動車市場に参入するのは難しいので、まずは電動工具や電動アシスト自転車向けに、09年には市場に出していく計画です。
(週刊東洋経済:中村 稔 撮影:ヒラオカスタジオ)

むらた・つねお●1951年8月京都府生まれ。同志社大学経済学部卒業後、村田製作所入社。89年に37歳で取締役、2007年社長就任。主に海外・営業畑を歩む。趣味は写真撮影。

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