【産業天気図・造船・重機】材料安等で最悪期脱するが、重機の本格回復なお遠い、小幅改善止まりで終始「曇り」

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10年4月~9月 10年10月~11年3月

造船・重機械業界は2010年4月から11年3月まで、業況は終始「曇り」となりそうだ。鋼材価格下落が造船事業に寄与するなどで、09年10月~10年3月の「雨」からは一段好転。ただ本格的な回復にはなお遠い。

10年3月期は、大手総合重機メーカーにとって最悪期だった。三菱重工業<7011>、川崎重工業<7012>、IHI<7013>、住友重機械工業<6302>などでは、見込み生産で景気に左右されやすい量産品部門の赤字が業績の足を引いた。さらに年度後半からは、急速な円高が利益を圧迫した。例外的に、量産品部門を持たず、造船事業の手持ち工事が豊富な三井造船<7003>は増益となる見通しだ。

11年3月期は、昨年の鋼材価格が下がったことのメリットが造船事業で本格的に出る。業績好転の度合いは量産品の回復に左右されることになろう。住友重機械の減速機、射出成形機など、景気底入れに際しての回復スピードが早い製品では、10年3月期の後半から需要好転が見られた。ただ、その勢いが産業機械全般には及んでいない。三菱重工は10年7月に紙・印刷機械を分社するが、他社でも同様のリストラの動きが加速しそうだ。

三菱重工は4月中に次期中期計画を発表する予定。その中では投下資本利益率(ROIC)8%を一つの目安に、事業の選別を進める方針が盛り込まれる見通しだ。川崎重工、IHIも同じタイミングで中期計画を発表する。多様な製品群を抱える総合重機メーカーが今後どのような事業戦略を描くのか、その見取図がまもなく出そろうことになる。

プラント業界では、原油価格の回復を背景に、日揮<1963>の好調が続いている。LNG関連の大型受注が相次ぎ、通期で5000億円を見込んでいた受注額を中間決算時点で7000億円(前期比595億円増)に引き上げたが、それも期中で達成してしまった。千代田化工建設<6366>はカタールのLNGプロジェクトの採算低下で10年3月期は大幅減益となったが、昨年12月にパプアニューギニアでLNGの大型案件を日揮と共同受注。こうした案件のウエートが高まることで、11年3月期の業績は急速に改善する見通しだ。
(西村 豪太)

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