角川が仕掛けるラーメン店に行列ができるワケ 月替わりで有名店が本気でラーメン試作に挑む

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「いわゆる『フードテック』(食の可能性を広げる先端技術)です。ここでは、これまで自分たちがしたくてもできなかったことができる。だから、ラーメンの歴史を変えたい、という店主の方々が集まってくれたんです」(福田氏)

ラーメンをつくる方、楽しむ方、双方に最良の環境を整えた、夢のような場所が同店なのだ。

なぜ場所が「所沢」なのか

ただ、ここで1つの疑問がある。なぜ場所が所沢市なのであろうか。それも、最近再開発が進んでいる西武線所沢駅周辺でなく、JRの東所沢を最寄り駅とする住宅地の中である。

それには福田氏の「シリコンバレー構想」とも言うべき、壮大な話がからんでくる。

「アップルやグーグルのキャンパスだってへんぴなところだけど、ITの本拠地で憧れの場所。誰も『田舎』なんて言いませんね。目指すのはそういう場所なんです」(福田氏)

角川アスキー総合研究所代表取締役会長兼CEOの福田正氏。コンピューター・サイエンスが専門で、食品メーカーを経て、2002年より角川デジックス代表取締役専務、2003年より社長を務め、2019年から現職。早期からIT事業に積極的に乗り出していたKADOKAWAにおいて専門知識で尽力するとともに、「角川ラーメンWalkerプロジェクト」の責任者も務める。右は福田氏がデザインにこだわって作った、ラーメン店主の顔出しパネル(撮影:梅谷秀司)

と福田氏が話すのは、アスキー総合研究所、KADOKAWAがオープンしたポップカルチャー発信拠点「ところざわサクラタウン」についてだ。KADOKAWAの新オフィス、書籍製造・物流工場のほか、イベントスペース、体験型ホテル、ショップ、レストランなどを備えるほか、角川文化振興財団運営の「角川武蔵野ミュージアム」も設置した。なんとクリエイターに御利益があるという神社まで建てられている。

地所は旧所沢浄化センター跡地。所沢市との共同で進める「COOL JAPAN FOREST 構想」の中心地となる。

ラーメンWalkerキッチンはその一施設だが、位置づけは単なる飲食店ではない。日本が誇るコンテンツとしてのラーメン文化発信拠点だ。ラーメンとポップカルチャーの関係は深い。藤子不二雄作品に登場する「小池さん」から始まり、近年では「君の名は。」の高山ラーメンなど、ラーメンが登場する作品は多い。

ラーメンとはもともとは安くてもおいしく、手軽に食べられる料理。お金がなくて苦労する漫画家やクリエイターにとって特別な意味があるものなのかもしれない。

敷地面積からいっても約4万㎡と非常に広大な同施設、国内のポップカルチャーファンはもちろんだが、ターゲットとして期待していたのがインバウンド。グループ内の旅行会社クールジャパントラベルや、アニメツーリズム協会とも連携して、空港からのシャトルバスを運行させる予定だった。

しかし例にもれず、コロナの影響で想定とは大きく違ってしまった。シリコンバレーのオフィスのようにオープンでおしゃれなKADOKAWAのオフィスも、飯田橋にある自社ビルから2000人の社員がこちらに大移動してきたものの、今はリモートワークで人影わずか。

しかし、開業後ラーメンWalkerキッチンに貼りついて様子を見ていたという福田氏によると「期待以上にいい」という。スーパーバイザー店主がスペシャルコラボラーメンを提供したオープニングイベント期間は、3時間半待ちの列ができた日もある。

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