インドから飛び出した「28万円カー」の威力

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インドから飛び出した「28万円カー」の威力

「衝撃的だった。ウチも頑張らなければ」(トヨタ自動車のある役員)、「あの値段で、ウチがクルマを造る考えはない」(ホンダの福井威夫社長)。

世界中の業界関係者が注目した新車が、今年1月に開催されたデリー・オート・エキスポ(インド白動車ショー)で登場した。地元最大の財閥系自動車メーカー、タタ・モーターズの「ナノ」がそれだ。関係者の耳目を集めるのも無理はない。「ナノ」は10万ルピー、日本円にして約28万円という超低価格車(工場出荷ベース、店頭価格は推定12万ルピー)。新車では世界一の安さである。タタは今年9月から売り出す計画だ。

狙いは2輪車ユーザー、商品化化に成功した理由

「プロミス・イズ・プロミス(約束は約束だ)」。同社のラタン・タタ会長は自動車ショーでそう胸を張った。2002年に構想を発表して以来、材料費高騰などもあって実現が危ぶまれたが、「約束どおりに商品を造り上げた」との意味合いである。

何せ、あらゆる機能をそぎ落としたクルマだ。ドアミラーが運転席側の一つしかない。ワイパーも1本のみ。ラジオやエアコンもなし。排気量は623ccで、最高速度は時速90~105キロしか出ない。

インドの07年の白動車市場は199万台(前年比14%増)と、ついに世界のベスト10に入った。同市場にはシェア5割弱を握る日本勢のマルチ・スズキや、韓国の現代自動車など世界の強豪がひしめく。だがタタが狙うのはそこではなく、年間743万台に及ぶ2輪車需要の置き換えだ。

道路網が未整備で慢性的に渋滞のインドでは2輪車が生活の足。父親がスクーターを運転、前に子供が立ち、後ろに母親が赤ん坊を抱えながら座っているという交通事情である。将来、比率が拡大するであろう年収100万ルピー(約280万円)以下の中間所得層に、「ナノ」=国民車として売り出すのが狙いなのだ。

この未開の地を狙った「ナノ」は三つの理由で商品化に成功した。

まず第一は前述したように、極端なまでの機能削減だ。ほかにも部品同士を一体化してファスナーなどの締結部品を削減。1点を小さくすることで材料の使用量も抑えた。デザインもとにかくシンプルに徹した。

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