北陸新幹線「延伸遅れ」、追加費用と工期の行方 増額分には工期短縮の費用も含まれているが

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鉄道・運輸機構は「工期短縮に伴う900億円の一部はすでに使われていて、2880億円(の増額)が認められれば2024年度中に完成するという意味ではない」と話す。また国交省鉄道局も「工期短縮による費用の増嵩(=増加)と工期は切り離して考えるべき」と同調する。

これでは、在来線に乗るより何時間短縮できるかわからないが、新幹線だから特急料金を払うべき、と言われているようなものだ。工期短縮と費用の関係がさっぱり見えてこない。

北陸新幹線福井駅の工事現場=2020年10月(編集部撮影)

毎回約2時間に及ぶ検証委員会の議論は非公開だ。鉄道局はその概要を1枚紙に要約し公表する。その内容を見る限り、鉄道・運輸機構が提出する工期と費用に関する説明は不足しており、委員から追加資料の要求が重なっていることがわかる。

例えば、1回目の委員会では主な工事の遅れ要因となった福井県境の加賀トンネル底部に生じた亀裂、大型化した敦賀駅の建設を中心に、工期を3年短縮した時点で間に合うと思っていたのかなど包括的な質問が出ているが、2回目には、詳細な工程表を示してコストや予算の変化を示すべきとか、鉄道局とのやりとりを整理すべきと迫られている。

地元はあくまで22年度開業を求めるが

2021年度予算で、国交省鉄道局は金沢―敦賀の追加経費を「事項要求」する。これは内容を詰めきれず予算額を明示できない場合に使う用語だが、財務省の国土交通担当主計官と折衝する時点で「おおよその説明では前に進めない。トンネルと駅だけでなく、全体にわたる資料が要求されている」(鉄道局)と、頭を抱える。

沿線自治体の熱い想いは、要望で持参したペーパーバッグにも表れているが……(筆者撮影)

11月17日に検証委員会が立ち上がったのと同日、北陸3県の知事と県議会、北陸経済団体の連名で国交省に要望書が提出された。その要望は、第一に2022年度末の開業実現に向けてあらゆる手段を講じること。第二に必要な財源を速やかに確保すべきだが、沿線自治体の負担は極力なくすことなど4項目。地元の要求は高い。

委員会の座長、政策研究大学院大学の森地茂名誉教授は、この難しい判断を迫られる会議の舵をどう取るのだろうか。取材の申し込みには、次のような返事が返ってきた。

「当該委員会について、まだ追加情報を要求中であり、議論途上のため、現時点での取材は遠慮させていただきます」

委員会は12月上旬の中間とりまとめを目指して週2回のペースで断続的に開催されているが、来年度予算編成に向けて時間は限られている。

中島 みなみ 記者

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なかじま みなみ / Minami Nakajima

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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