新幹線0系誕生の「影の立役者」、在来線車両5選 技術の積み重ねが世界に誇る高速鉄道を生んだ

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ED44形は交流電動機を駆動する直接式、ED45形は交流を直流に変換(整流)して直流電動機を駆動する間接式(整流器式)として、比較試験を実施。その結果、間接式のほうが優秀な成績を収めたため、1956年から複数の整流器式を比較試験した。これらの試験結果も反映させて新幹線の架線電圧は交流2万5000Vを採用。整流器式の交流電車として開発された。

日本の交流電化の礎となった交流電気機関車ED91形。宮城県利府町の森郷児童公園に保存されている11号機は、乾式変圧器、風冷式イグナイトロン水銀整流器、低圧タップ切換制御を採用していた(筆者撮影)

0系が採用した電圧制御の方式は低圧タップ切換式。これは主変圧器に交流25000Vを入力する高圧側コイルはそのままで、最大電圧2261Vに変圧した電力を出力する低圧側コイルに、出力電圧を切り換えるタップ切換器を設置したもの。出力された交流電流はシリコン整流器で直流に整流(変換)され、主電動機を駆動する。これにより、高出力化の実現と、地上設備投資の抑制を図ることができた。

重要課題だった「軽量化」

国鉄10系客車

国鉄はスイス国鉄の軽量客車の影響を受け、1955年に軽量客車10系を製造した。従来の車両は車体の強度を頑丈な台枠が負担する構造としていたが、10系は台枠、外板、屋根など車体全体で強度を確保する準張殻構造(セミ・モノコック構造)を採用することで、大幅な軽量化を果たすことができた。

10系軽量客車は客車のみならず、電車、気動車の準張殻車体の基礎となっている。現在は、碓氷峠鉄道文化むらのナハフ11 1(写真)、オハネ12 29、オシ17 2055や、リニア・鉄道館のオロネ10 27などが保存されている(筆者撮影)

車重が軽いほうが軌道への負担も少なくなり、高速運転にも向くだけでなく、建設コストの低減にも有効である。国鉄では10系以降、電車、気動車、客車のセミ・モノコック構造化を推し進めた。

新幹線でも当然セミ・モノコック構造の車体を採用して、軽量化を図っている。ただし、新幹線の開発ではトンネル進入時の気圧変動によるさまざまなトラブルが発生。特に乗客の鼓膜に影響を与える「耳ツン」現象は重大な問題となったため、0系では客室を気密構造とし、トンネル進入時には空調の外気導入もカットした。その後気密構造はデッキ、便洗面所にも適用範囲を広げている。

国鉄101系

国鉄新性能電車のパイオニアとなった101系。2M1ユニット方式や発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ、平行カルダン駆動方式などを採用。近郊型、急行型、特急型電車は101系の技術を応用して開発された(筆者撮影)

101系(登場当時はモハ90系)は国鉄新性能電車のパイオニアとして1957年に登場した。101系の大きな特徴は、車重を低減させるためにM車とM'車の2M1ユニット方式を採用し、中空軸平行カルダン駆動を採用したこと。そしてブレーキ性能の向上のため発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキを採用したことなどが挙げられる。

101系は1957年に行われた高速度試験で、最高時速135kmを記録。このときは空気ばね台車の試験も行っており、特急型電車151系や新幹線0系開発の貴重なデータを提供している。

0系では2M1ユニット方式や発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキを採用。ただし線路幅が広い新幹線の0系は、駆動方式はWN継手式平行カルダン駆動を採用した。

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