岐路に立つグロソブ、修正を迫られるPIGS国債の大量保有

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 基準価格が急落、低迷している最大要因は円高。裏返せば、ドル安、ユーロ安だ。特に、通貨別でグロソブの運用資産の4割以上を占めてきたユーロは08年7月14日の1ユーロ=169円65銭から09年2月2日には114円34銭まで33%もの大暴落。09年10月末にはいったん138円台まで戻したものの、その後、ギリシャ財政危機を発端とするユーロ安で再び下落。最近は120円台前半で推移している。

しかも、ギリシャ危機はグロソブに特に響いた。というのも、昨年来、グロソブを運用する国際投信投資顧問は、ギリシャをはじめ、ユーロ圏内でも信用リスクが比較的高い(その分、利回りも高い)南欧の「PIGS諸国=ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン」の国債を大量に買い増していたからだ。

ギリシャ国債を1600億円超買い込み、全額損切り処分

ギリシャ国債については、昨年5月に新たに組み入れ、10月にかけ計1600億円以上を買っている。グロソブの運用資産に占める比率は3.7%にまで達した。グロソブがベンチマークとするシティグループ世界国債インデックスで見たギリシャの構成比は1.9%なので、通常より約2倍もオーバーウエイトしていたことになる。

同様に、イタリア国債については運用資産に占める比率が09年1月末の9.4%から、10年1月末には15.8%へ上昇。ベンチマークの構成比8.3%からすると、2倍近いオーバーウエイト。スペイン国債は、09年2月末の4.4%から10年1月末の7.2%へ上昇。ベンチマークの構成比3.4%と比べ、やはり2倍強のオーバーウエイト。ポルトガル国債は、ギリシャ国債と同じく09年5月に新たに組み入れ、10年1月末には2.4%へ上昇した。ベンチマークの構成比0.8%と比べると、3倍ものオーバーウエイトだ。昨年12月初頭の段階では、グロソブの運用資産のほぼ3割がPIGS国債で占められていた。

ところが、昨年10月以降、事態が急変。ギリシャの政権交代直後、財政赤字見通しが大幅拡大修正されたことを契機にギリシャ国債が急落(利回りが高騰)、格付け会社が相次ぎギリシャ国債を格下げ方向で見直したことで、グロソブはギリシャ国債の保有分を12月に全部処分売りに追い込まれた。

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