日本の教員があまりに疲弊せざるをえない事情 中学校教員の6割近くが「過労死ライン」超え

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教育研究家の妹尾昌俊氏の著書『教師崩壊』によれば、総務省統計局の「労働力調査」(2016年度)にある他業界の労働時間と比べても、教員は群を抜いて長いという。さらに、日本の中学校教員は世界のどの国よりも圧倒的に長時間労働であるとの教育社会学者の舞田敏彦氏の説を紹介しており、これらの状況から毎年少なくとも6人の教員が過労死していると指摘する。

事務書類作業が多忙の原因

ベネッセ教育総合研究所「第6回学習指導基本調査DATA BOOK(小学校・中学校版)」(2016年実施)では教員に仕事の量や時間に関する悩みについて尋ねている。最も多い回答が小、中学校では「教材準備の時間が十分にとれない」だが、それに続き「作成しなければならない事務書類が多い」との回答が小学校で約85%、中学校で76%となっている。

近年は、学校のあらゆる活動に関して事前.事後に書類仕事が必要となっており、そのうえ、国.教育委員会の調査書類、保護者など外部からのクレーム予防のための書類などが急速に増加している実感があることは、後述する現職教員も異口同音に語ってくれた。

最多の回答である「教材準備の時間が十分にとれない」という悩みの原因の一つが、事務書類の多さであると考えても間違いはあるまい。

さらに、同じ調査で「教育行政が学校現場の状況を把握していない」と回答した教員が小学校で78.2%、中学校が74.8%、高校が76.8%とどの学校種でも高くなっている。学校現場に教育行政に対するこれほどの不信感があるのは由々しき問題である。

先に文科省の統計で把握された教員数を挙げたが、これは正規教員に常勤の非正規教員を加えた数である。実際には多数の非常勤の教員抜きには学校は立ちゆかない。

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