「夢」「勇気」「仲間」「絆」「寄り添う」「イノベーション」──。
何かを語っているようで何も語っていない抽象的な言葉が、政治やビジネス、ネット、J-POP界隈に蔓延している。
世の中はいつからポエム化し、人々はポエムに何を求めているのか?
ポエム化現象のナゾを5日連続で解明していく。
3日目は、ネットニュース編集者の中川淳一郎さんに、ネット空間のポエム化を伺う。
※1日目 小田嶋隆さんはこちら
※2日目 常見陽平さんはこちら
グルメ系のレビューがすごい
誰でも自分の文章をすぐネット上に発表できる時代になった。それがポエムが氾濫する要因のひとつだろう。ネット空間はポエムのカオスに見えて、実はある特定の層のポエム化が激しい。
ネットを1日中、見続けるのが仕事のネットニュース編集者、中川淳一郎さんによれば、ポエムっぽい文章を書く人は、大きく4つに分かれるという。「グルメ系」「ネトウヨ系」「スタートアップ系」「ヤンキー系」だ。
まず「グルメ系」は、自分が食べたものや食べに行った店について書き連ねる人々。グルメサイト「食べログ」のレビューが圧巻だ。「narumiさんという方が『食べログ文学』をまとめているので、ぜひ観賞してほしい」。
narumiさんの「これが『食べログ文学』--“レビュー”という名の極上ポエムと私小説を堪能せよ」には、食べログのレビューから珠玉のポエムが6つ、ノミネートされている。たとえば、エントリーナンバー1(以下に引用)。
あふれる涙
あふれる汗
あふれる滴
まだみえない
あふれる歓びがあると信じて
ラーメン店のレビューとは思えない。ノミネートの条件は、「味への言及が極端に少ない」「もしくは言及なし」「店に入るまでがやたら長い」「店に入らずに終わることもある」の4つだそうで、納得。もはや食欲より書くことへの欲求が勝っているのだろう。
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