エイベックス「虎の子」南青山の本社ビル売却へ 保有不動産を放出する企業がコロナ禍で増加か

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業績や決算対策のみならず、財務体質強化の名目で遊休資産の放出が進むことも不動産業界の追い風となりそうだ。NECは10月30日、保有資産見直しの一環として相模原事業場を不動産会社大手のヒューリックに売却した。売却価格は非公表だが、連結ベースで約160億円の譲渡益を計上する。売却後もNECはヒューリックから賃借する形で、引き続き事業場を利用する。

燃料商社のシナネンホールディングスも、11月9日に品川区内の土地を売却すると発表。こちらも資産効率の向上および財務体質の改善を理由に挙げる。売却先は非公表だが、オフィスとマンションの開発用地となる予定で、シナネンHDはオフィス棟を賃借し本社として使用する。

海外投資家も日本の不動産に照準

通常、景気後退局面では不動産市況が落ち込むため、売却価格も相場より割安になりがちだ。ところが、足元では不動産に対する金融機関の融資姿勢に大きな変化がなく、海外投資家もコロナ禍の影響が相対的に軽微だった日本の不動産に照準を定めているため、買い叩かれる気配がない。

JTビルは約800億円で決着(記者撮影)

JTは10月に、東京・虎ノ門の旧本社であるJTビルを住友不動産に売却すると発表した。この売却価格については非公表ながらも、複数の関係者によれば約800億円と見られる。下馬評よりも高い水準で成約に至ったことは、コロナ禍でも不動産投資意欲が落ちていないことを示している。

冒頭のエイベックスビルは自社ビル仕様であり、一般的な賃貸オフィスビルと比較して流動性(売りやすさ)や有効率(延べ床面積のうち賃料が取れる割合)で劣る。坪単価で1500万円前後を目線に交渉が進んでいるという見方もある中、成約価格の行く末は国内の不動産市況を占う試金石となりそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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