ファミマ、上場廃止に漂う「個人株主の哀愁」 臨時株主総会で澤田社長は「精神論」に終始

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会場にいた関係者によると、経営陣の並ぶ壇上の空気が変わったのは、ファミマ加盟店を長く運営しているという株主が質問に立ったときだという。「人生においてファミマとともに歩んできた思いは強い」と話すこの株主は、「今後のファミマの経営で澤田社長の理念やポリシーの独自性がどれだけ発揮できるか」と問いただした。

「お客さまを向いて仕事をしていこうという理念は、創業以来まったく変わっていない。今後も一番大事なポリシーだと思っているので、(そのポリシーを)念頭に置いて今以上に加盟店の皆さんと協力し合って、お客さまに対して素晴らしい商品、サービスを提供し続けていきたい。そのためには伊藤忠商事の協力をいただいたほうが促進できると信じているので、ぜひご理解いただきたい」

澤田社長はそう答えたが、質問した株主がどこまで納得したかはわからない。

普段は饒舌な澤田社長だが、臨時株主総会では「全力で頑張っていきたい」など抽象的な発言を繰り返すだけだった。

納得いかない様子の株主も

総会終了後、出席した株主からは、「紋切り型の答弁で誠意をあまり感じられなかった。伊藤忠出身である澤田社長にはファミマへの思い入れがないのだろう」との感想が聞かれた。この株主は、「加盟店オーナーなどは今後もファミマの仲間であり続ける。一方の私は応援し続けたいのにただの消費者でしかなくなる」と納得のいかない様子だった。

投資による利益だけを目的とするのではなく、ファミマへの愛着を持って株を持ち続けた株主も少なくないはずだ。具体的な説明がないまま「ファミリー」から外される株主の哀愁が漂う総会だった。

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遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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